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ピザ!のSPNminacoのレビュー・感想・評価

ピザ!(2014年製作の映画)
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大都会のスラムに暮らすやんちゃな兄弟の心を掴んだのは、ピザという未知の食べ物。どうしてもピザを食べたい!兄弟の思わぬ大冒険が始まる。
毎日カラスの卵を盗み喰いしてた空き地、お金持ちの子、開店したピザ屋と映画スターを、兄弟含むスラムの子供達はフェンス越しに見る。刑務所内のパパもまた、柵の外に出たがっている。ピザは手が届かない向こう側の象徴だ。お金さえあれば…と兄弟は稼ぐことに奮闘するが、それでも道は遠かった。そもそも配達してもらう住所もないのだ。お兄ちゃんの意地とプライドが切ない。
とはいえ、映画は活き活きした子供の顔と躍動感いっぱい。そして色鮮やかなピザとその匂いが搔き立てる猛烈な憧れ(おばあちゃんがこしらえたコレじゃないピザもそれはそれで美味しそうだけど)。TVや携帯もいいけれど、どうしてもピザでなきゃダメなんだ。まだ妥協や諦めを知る前の渇望がそこにある。それが兄弟の小さな世界をぐんぐん広げていく。
一方、大人側では抜け目ない小悪党、議員センセイ、ピザ店という姑息な「欲」の駆け引きが兄弟を取り巻く。そのトライアングルで結果的に利を得るのが誰かを見れば、そこも身も蓋もなく金の問題であることが興味深い風刺。(功利主義でも建前があるだけまだマシかもしれない)
だからこそ、真のゴールはピザじゃない。兄弟にはその過程が成長への通過儀礼であり、フェンスの外へ越境することで初めてわかることがある。ニンジンおじさんもまた、魂だけは自由に越境してる人だった。
伝統音楽ではないリリカルなスコアが爽やか。地面を伝うおねしょで始まり頰を伝わる涙へと水の使い方も巧い。パパの件サクッと流してあのラストにしたのは正解だったなあ。
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