【汗の匂い皆無の“スポ風”そして“半ドル”映画】
原作は少女漫画と思ったら、スピリッツ連載中の薙刀JK物語なのだとこの実写化で知りました。頭三巻分ほど読んだが面白くて、秋元ガールズ使っての実写化にも思う所あり、行ってみた。…シネコン無料券で(笑)。
成程、商品としてはアイドル映画だろうが、正面からはそう仕立てていないのね。そこが呑み易さでもあり、弱点でもあり。
乃木坂の皆さんは健気に頑張って、脚本通りに演じたのでしょうが、立体的な人物には見えなかった。本作での秋元ガールズは、グループで映画に当て嵌めたので、まとめ売りの安心感は出ている気はする。
が、個人にフォーカスされると、ソロの役者勝負ではやっぱり厳しいね。結果的に、演技力と脚本力の弱点コンボになってしまったようにも思いましたが、先に原作で出来上がったキャラを見ていたから、拍子抜けしたことが大きいのかも。
最終戦でやっと映画的には面白くなった。薙刀の試合は顔が隠れ同じ防具で覆われるから、画的には身体のアクションで伝え魅せるしかない。最後でやっと、薙刀に込められた各メンバーの個性や面白さが発揮されつつあり、引きこまれました。
始めからこれ位のトーンや集中力で進んでほしかったですね。冒頭辺りでは居たたまれず帰ろうかと思ったもの。
実態知りませんが、女子だけの運動部ってこんなキレイに済むものだろうか? 特に、あの地獄の合宿で汗まみれボロボロになった夜、みんな小奇麗な姿で放心していて、ヘ?と思った。
全般、本作から汗の匂いは伝わらない。「スポ根」はもはや死語でしょうが、スポーツ自体は今昔変わらない筈。“スポーツ根性”ではなく“スポーツ風味”映画なのですね。今はその方が受けるのだろうし、こう見せるのが乃木坂46を借りる条件なのだろうなあ、とも思ったけれど。
とはいえ、鼻白んでしまうのも事実。特に気になったのは白石麻衣演じる真春。何やろうがスッピンだろうが美人、という人物だと思うが…だからボロボロになっても素で美人、という姿を見せてほしかった。あれだと地獄の合宿にさえヘアメイク連れて来てるだろ、としか見えません。
あと皆さん、人間臭さから醸されるユーモアを出すことはできないみたいね。例えばラーメンドカ食いさせても、記号的萌え止まりで、人間的萌えまでは昇らず残念。こういう所で、アイドルと役者の違いを感じたりもしました。“可愛いから許す”という気持ちさえ出てこなかったなあ。
アイドルを使って、アイドル映画らしからぬ演出を施したが、やっぱりアイドルの弱点は醸されてしまった…との後味がする映画でありました。
そういえば、かつての角川映画のアイドルなら、クレーンで宙づりにされた上コンクリート責め!なんてシゴキに遭っていたなあ…などと思い出しもしましたね。
<2017.9.25記>