Kuuta

赤線地帯のKuutaのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
4.1
売春防止法が成立する瀬戸際、明日にも消える幻のような空間で女たちが繰り広げるドラマ。

・個々のエピソードが描かれる群像劇だけど、店の中では画面の奥行きを活用。引きの構図で、客も女も出入り業者も思い思いに動く。一人に寄らずとも、キャラクターの個性を同時に描いている。店の1階は開放的で繋がっているが、2階は個の空間。外では看板や壁で断絶を表現し、母息子の別れの場面で2人の間をバイクが通り過ぎる。ラストシーンはまさに「境界」。

・「普通の結婚」を果たしたより江(町田博子)が、「自由にお金を使える」生活を求めて戻ってくるくだり。決して彼女が自堕落なのではなく、専業主婦になった方が心身共に貧しくなる現実が描かれている。

・豪華女優陣の中で一際暴れ倒す京マチ子、人の間をクールにすり抜けていく若尾文子。濃厚なドラマに差し込まれた、箸の持ち方もままならないしづ子(川上康子)が天丼をかっ喰らうシーンで涙。82点。
Kuuta

Kuuta