ぺろ

赤線地帯のぺろのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
3.9
NFAJにて。

Sexwork is work、の切実さと限界をこれでもかと描く溝口の遺作。色っぽさなどまるでないドライさ。ラストの無常感。俳優陣は皆良かったが、特に木暮三千代のどん詰まり感と優しさが良く、その病んだアカ崩れの旦那が娼婦への差別心をぼろんと出しちゃうところはめちゃくちゃ気持ち悪かった。ゆめさんの息子は酷いが、息子の気持ちが全くわからないと言えば嘘になってしまう、つらい。

やっちゃん(あやや)だけが強かに、非情にやっていく才覚があり、そのおかげで苦界から抜け出すことができるが、映画自体はそのような逞しさを決して美化しない。「赤ん坊のミルク一つ買えなくて何が文化国家か」というようなセリフがあったが、これに尽きると思う。才覚がなくても、非情にならずとも、sexをworkにせずとも、女性が皆生きていける国でなければならない。「当時のセーフティネットとしてのsexwork」という言葉はクリシェに過ぎない。

映画としては最高にクール。売春禁止法前夜の吉原の路地、妓楼「夢の里」の不思議な建築、その中で生きる女性たちの姿を生き生きと切り取る宮川撮影。黛敏郎の不穏な音楽、俳優陣のパフォーマンス全てが良い。
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