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アトミック・ブロンドのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)
4.7
1989年、東西冷戦末期のベルリン。世界情勢に多大な影響を及ぼす欧州で暗躍するスパイに関する極秘情報が記載されたリストを持ち出そうとしたイギリス秘密情報部のスパイ・ガスコインが殺されリストが奪われる。ガスコインは、東ドイツ保安部シュタージに所属しているスパイグラスから西ドイツへの亡命と引き換えにリストを渡されていた。イギリス秘密情報部MI6は、凄腕の女性エージェント、ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)にリストの奪還を命じる。ベルリンに潜入中のエージェント、デヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)と共に任務を遂行するロレーン。だが彼女には、リスト紛失に関与したMI6内の二重スパイ“サッチェル”を見つけ出すというもうひとつのミッションがあった。ロレーンに近づくフランスのスパイ・デルフィーヌ(ソフィア・ブテラ)などリストを狙って、ベルリンに集結する世界各国のスパイ。影でパーシヴァルがKGBに近づき不審な動きを見せるなど、誰が味方で誰が敵なのか。敵味方の区別がつかない状況の中、ロレーンと世界の運命は……?
アントニー・ジョンストン作のグラフィック・ノベル「The Coldest City」(日本語訳版出版希望!)を元に、「ジョン・ウィック」のデヴィッド・リーチが監督したスパイアクションスリラー。
シャーリーズ・セロン演じるロレーン・ブロートンは、「マッドマックス怒りのデスロード」のフュリオッサに並ぶドはまりのキャラクター。情報収集、戦闘、潜入脱出のプロで、どんなにピンチになってもクールな美貌を崩さず、好みの女の子に体は許しても心は許さず、例えイギリス秘密情報部の上司でも自分流を貫き、罠にはめられない抜け目の無さを持つクールな頭脳の持ち主で、任務中でもスタイリッシュなファッションとウォッカとタバコは欠かさない。
デヴィッド・リーチ監督は、「女性がアクションする時にありがちなスタイリッシュなアクションは避け、泥臭い痛みが伝わるようなアクションを心掛けた」と語るように、常に相手の隙を突き相手の膝や喉などの急所を集中して攻撃し、自分の銃の弾が切れれば銃で殴り、周りにあるものを武器に使い確実に倒すリアルなガン&格闘アクションが光っている。
特にクライマックスでの、ロレーンがスパイリストを持つスパイグラスを連れて東側から西ベルリンに脱出するためKGBの刺客と戦うアクションシーンでは、ロレーンが息を切らし痛みに呻きながら相手の隙を巧みに突き武器を奪い急所を集中して攻撃して相手を倒しつつ切り抜けていく生々しいアクションで、泥臭いが故にロレーンの強さが際立つものになっていた。
スパイリストをめぐって、騙し合い利用し合うスパイ同士の駆け引きも複雑でスリリングで、劇中で流れるデヴィッド・ボウイやネーナやニューオーダーなど80年代のヒットナンバーがちりばめられたスタイリッシュなスパイアクションスリラーの傑作です。
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