面白くはない陳腐なテーマでも見応えあり
田舎のとある自治体における再開発事業。その土地を巡る地権者、開発側(腐敗した市の有力者)に与する暴力組織、土地アパートに住む外国人労働者達、外国人排斥主義者などが織りなすエピソードを描いた作品。
ありがちと言えばそう言えるテーマとは思うが、土地地権者の一筋縄にいかない複雑な家庭事情を加えたことで、ありがちとは言えない非凡な雰囲気醸成に成功したと感ず。
重要なキーアクセサリーが冒頭で示され、クライマックスで用いられることにはなるが、それで再開発が中止となるかどうかは描かれていない。
上の件と併せ終わり方があれでは消化不良感は否定できず何のカタルシスも得られない。
しかし、深み厚みが感じられる画作り、何か重いものを背負ったかのような悲壮な役者陣の演技、メリハリをつける誇張気味の演出が個人的にははまり、意外な見応えがあったとは言える。
「太陽」に次ぐ入江悠監督作品としては2作目。今回、太陽でうすうす感じていた「入江話法」とでも呼べる独特の演出雰囲気を肌感覚的に理解できたのは大きな収穫。
後味宜しくないのに満足できた部分もあるというまだすっきりした評価はできない段階だが、彼の作品には今後も注視しぼつぼつ見ていきたい。
突っ込もうとすれば数多くできるだろうが、ポジティブ面が優勢だったので控えたい。
篠田麻里子は最初どうかなと感じたが、いやなかなか立派に田舎市議会議員の妻を演じていた印象。市の有力爺に肉体をひさごうと物おじせず入室する場面はそれだけでエロさが充満していた。
それが「入江話法」かどうかは断言できないが、殺傷場面におけるオーバーな血のりの量や噴き出しには痛いという感覚より、奇妙な苦笑いが生じてしまった。
バイオレンス場面が多くても文字通り苦痛にならずに見ることが出来る演出だとやはり気楽。(勿論見るだけで苦痛・嫌悪の人もいるだろう)
総評3.5の三ツ星
022008