三樹夫

ワイルド・スピード/ファイヤーブーストの三樹夫のレビュー・感想・評価

3.4
ワイスピ最終章の第一部。車でスカイダイブ、空をブチ抜け車で宇宙へ、などのワイスピ車大喜利の始まりである(ワイスピが面白い方向に狂った始りとも言える)車で金庫引っ張る『MEGA MAX』が話の発端になっているが、今作では車大喜利はなし。ただローマで爆弾コロコロ、フルアーマーミサイル旧車など車に不可能はないの派手派手アクションは健在となっている。最終章ということもあり決算的な内容になっており、過去の振り返り的な映像や、過去の展開が踏襲される(ブラジルで走り屋公道レースなど)。登場人物も大サービスやとばかりに、今作でも男塾システムが採用されており、死亡確認とおっ、お前はーっ!!の死んだり生き返ったりでやたらゴキゲン。なのでワイスピを全く観たことがない人には誰これとなるので、未見の人にも優しいとは言えず、シリーズファン向けであるが、相変わらずアクションが派手なのでとりあえずそこのところを楽しめば大丈夫にはなっている。というよりワイスピは細かいことは気にすんなの脳筋の作りだから、シリーズ観てるだの観てないだのはどうでもいい気にすんなという間口の広さがあると思う。
ミシェル・ロドリゲスとシャリーズ・セロンのド突き合いは、番長同士でタイマンはったら仲間みたいなことやってて、ほんと脳筋だなと笑ってしまった。秘密組織の地下研究施設みたいな中学生が考えたのかなってテロップはもはや清々しい。

今作のテーマといえばファミリーにつきる。作中何回ファミリーという言葉が出てくるか。ワイスピのマイルドヤンキー的なファミリー感押しは前からあったが今回は全押し。ただ俺はワイスピのファミリー感はいいと思っていない。まあどの映画でも基本ファミリー感好きじゃないけど。なんか強制的に強いつながりを求められるみたいな関係性が息苦しい。ドムの家でのBBQパーティーは強制参加みたいな。今度のBBQパーティーはコナンの映画観に行くから今回はパスとか言ったらすごく嫌われそう。現実世界でファミリー感出してくる奴ってよく家父長制がセットでついてくるし、例えば紳助ファミリーとか、紳助を父親として、父親である紳助には一切逆らわないっていう、紳助が気持ちよくなるためだけの支配体系でしかないし。紳助以外の人間にも、そんな紳助にとうちゃんと懐いて、家父長制の被支配者になることで得られる満足感もあるだろうけど。他だとファミリー感出してる会社でもこういうのあるし(社長を父親とした家父長制の会社とか)。ファミリーには負の面もあるのに、ワイスピは負の面には目もくれず無邪気にファミリー至上主義になっているのがついてけない。ファミリー内の年長者が一番偉いみたいな、アブエリタがパーティーでスピーチするを周りがまるで神託を授かるかごときとか、誰が一番偉いとか順列つけず全員大切にし合えばいいのに。
ただ今回の敵はそんなワイスピファミリー感に挑戦するというか脅かす存在として出てくるが、死体で人形遊びする孤独な男、父と子の絆にすがる結局は家父長制の依存者みたいな奴なので、このファミリー感を否定するような奴は異常な奴なんやっていう、ワイスピって自分とこのファミリー感を至上のものと思ってるんだなと思った。
初期ワイスピを踏襲した走り屋公道レースのシーンは、というより初期ワイスピもそうだが、女性はトロフィー、イケてる女とイカつい車転がしてるのがイケてる男というマッチョ主義の世界で今観るとさすがにきつい。ワイスピって、マッチョ主義→ファミリー最高という変遷をたどってるけど、イケてる女とランエボだのGTRだのイカつい車転がして、家族出来たらファミリー最高ってヤンキーの人生みたい。
最終章ということで総決算のため色々なキャラ総登場で、それぞれのキャラのシーンを作らなければならず、息子のBのシーンも作らなければならないし、ローマン一行のシーンも作らなければいけないし、ミシェル・ロドリゲスのシーンも作らなければいけないしでその結果上映時間2時間越え。キャラの登場時間を稼ぐため、キャラのアクションを作るためのシーンがあり、正直いるかこのシーンと思うところがある。総決算的な事情があるのはわかるけど、上映時間2時間20分あるのは長いし、観てて面白くないシーンもある。
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