おにおに

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のおにおにのレビュー・感想・評価

4.3
Amazon Prime Videoで鑑賞

もともとこの辺の話には興味があり、NHK「映像の世紀」なんかもよく見ます。その延長線上で見始めた映画。

「おもしろかった」というのとはちょっと違うとはおもいますがよかった!


タイトルのとおり、第二次世界大戦時の英国首相ウィンストン・チャーチルの話。
チャーチルについては説明不要ってことで話を進めますが・・

チャーチルの話ではあるんですが、首相就任から退陣までを長く薄く追った映画ではなく。
首相に就任する1940年5月からの約1か月間の話にぐぐっとフォーカスされていて、その「濃さ」がよい。
ベルギー、オランダ、そしてフランスがヒトラーに蹂躙され、連合軍がダンケルクに追い込まれ、撤退に成功するか否かの瀬戸際。
ナチス・ドイツの勢いは手をつけられないほどにすさまじく、和平交渉の道を模索するか、徹底抗戦の道を進むか・・
っていうところでの数週間のあいだの政敵との駆け引き、苦悩・・

ダンケルク撤退が成功し、有名な下院での6月4日の歴史的な演説がクライマックスシーン。

このシーンは「映像の世紀」なんかでもたびたび出てくる有名な演説です。
ウクライナのゼレンスキー大統領も英国下院でこの演説を引用した演説をしてましたね。

 ヨーロッパの大部分と、多くの国々が嫌悪すべきナチスドイツに陥落したとしても、
 我々は、ひるみはしない、くじけはしない。
 我々は最後まで戦い続ける。
 我々はフランスで戦う、海で戦う。そして日々募っていく自信と力をもって、空で戦う。
 我々はどんな犠牲を払おうとも、我々の島(イギリス)を守りとおす。
 我々は海岸で、水際で、平原で、街路で、そして高原で戦う。
 我々はけして降伏しない。

チャーチルは後に「第二次大戦回顧録」でノーベル文学賞を受賞するほどの文才のひとだ。演説の一言一句がまぁかっこいいですねー。

登場人物はそれほど多くはなく、ヒトラーもキャスティングはされていません。
チャーチル役のひとはそんなに「似てる」とは思いませんでしたが、まぁなかなか好演してたとおもいます。
前首相で政敵のチェンバレンはそっくり!

戦場のドンパチのシーンもほぼなく、終始、イギリスの議会、内閣、王宮、軍部(?)あたりの会話劇で進行します。
これが非常に見ごたえがある。
画面の「色」も全体的に暗く、「セピア色」な雰囲気ですごく味があります。

タイピストの秘書から見た視点、っていうのがひとつあって、それもなんかよかった。
普段着でみせるチャーチルのひととなりというのをうまく描いてたんじゃないでしょうか。

地下鉄でイギリス市民の「声」をじかに聞く、というのは創作エピソードのような気もしますが・・
まぁ映画ですし、それもよかったんじゃないでしょうか。

勝手なイメージですが、チャーチルは日本でいうと吉田茂あたりがキャラが近い気がしますね。
豪放磊落で憎めない爺さんって感じの。

邦題だと「ヒトラーから世界を救った男」という副題がついてますが、これ要ります?
これは余計だとおもいます。野暮なんですよねぇ。こういう副題をつけることでかえって格を下げてるというか・・
「ウィンストン・チャーチル」で十分だ。

知名度はそれほど高くもなく、どちらかというとみる人を選ぶ地味な映画だとおもいます。
が、★はけっこう高い。4.3でお願いします。
おにおに

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