geluro

孤狼の血のgeluroのネタバレレビュー・内容・結末

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

スカッとしてていい映画だった。

以下、ネタバレあります。


物語はスカッとしていてわかりやすいのだが、絵面と演出はコテコテ。冒頭から豚の糞を喰わせてエンコ詰めるシーンから始まるのだから、なかなか期待値が高まる。拷問でヤクザの陰茎を切り裂き真珠を取り出す、切り取った首を小便器に投げ捨てる、など特殊メイクおよび演出に込められた過度なコッテリ感が良い。

ヤクザ映画はほとんど観たことないが、おもしろかった。主人公側はマル暴なのでヤクザ映画というのかは分からないが。

ピエール瀧が右翼の幹部、銀次として出てきた時、やっぱこの人はこういう役やらせたら最高やなと思いニヤニヤした。終盤でこいつの苗字が瀧井だとわかりクスッと笑えるシーンがある。というか、鑑賞後に調べてみてはじめて瀧井と分かっただけで、そのシーンを観ている限りは「瀧」に聞こえる。紋付袴を着た右翼幹部のピエール瀧が、ヤクザの親分に紹介されて「瀧です」と頭を下げているのだ。ここで、あ、この映画は真剣にふざけてるなと納得した。物語の転換に使われるナレーションの声質や、エンディングの背景に出てくる出演者たちのモノクロ絵を見ても分かる。ぜんぶやりすぎなのだ。
コテコテのおもしろさとカッコよさを意図的に追求した作品なんだろうと思う。コテコテにしかないおもしろさは、確かにある。

全体的におもしろいし飽きずに観られるのだが、ひとつ気になったところがある。
法律など無視で無茶苦茶な捜査を続ける大上(役所広司)が、実はカタギの人間のことを最優先に考えている人間で、殺人を犯したと噂される14年前の事件も、人の罪を庇って画策したのだとわかるシーン。主人公の日岡(松坂桃李)は、彼の内情を暴くスパイとして県警から呉原東署に送り込まれたものだが、実は県警こそが悪者で、大上こそがいいやつだった!というわけだ。ここが引っかかった。話の筋はいいのだが、ちょっと安易ではないかと。
過去の真相を語るクラブのママ(真木よう子)のセリフがくさいし、演出がダサい。なんだかこのシーンだけが浮いて見える。そこまではいい感じに進めてきたのに、急にトーンダウンしてないか?と。トーンダウンというか、なんかここだけ普通やなと。
破天荒で抜け目のない大上だからこそ、実は日岡を騙すためにママを懐柔しているのかな?と想像しながら観ていたが、別にそんなことはなかった。ただただ、大上はいいやつだった。
書きながら思い出してきたが、大上の死後、日岡の捜査日記に大上の書き込みを発見するシーンがある。そこには「われの目は節穴か」「本当に広大出たんか」など、大上の言いそうなダメ出しセリフが書き込まれている。だがページが進み最後まで行くと「ようやったのう、ほめちゃるわ」と。日岡は男泣きに泣く。うーん……。これはどうだろう?コテコテっつうか、お涙頂戴になってないか?
一周まわって、そういう実はいいやつみたいなベタ、つまり王道をやってるのかとも思ったが……ここは好みが分かれるところかもしれない。わたしは、もうひとひねり、なんらかの裏切りを期待してしまった。

とはいえおもしろかったです。グロいところもあります。
geluro

geluro