回想シーンでご飯3杯いける

29歳問題の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

29歳問題(2017年製作の映画)
3.9
邦題もなかなかナイスだけど、原題の「29+1」には敵わない。29歳と30歳では、歳がひとつしか変わらないのに、本人の気持ちも周囲からの目線も全然違う。男女平等とは言え、女性の場合は出産する体力の問題や、仕事と育児の兼ね合い等が現実的な問題としてのしかかる。

本作の主人公ヨックワンは香港の新進企業でバリバリ働く29歳の女性。そんな彼女がとあるきっかけから、同い年のティンロが住む部屋を借りて1人暮らしする事になる。ヨックワンはティンロと面識が無かったが、部屋にあった日記を読んだ事から、自身の心に正直なティンロの生き方に惹かれていく。

日記や写真を通じて過去を振り返る手法はアジア映画の得意とするところ。本作は香港が舞台という事で、韓国や台湾の映画に比べて、より日本の雰囲気に近く、主人公の生活や葛藤に共感する日本人女性もかなり多いのではないか。クリッシー・チャウが演じる主人公の、美しさと庶民的な魅力を兼ね備えた人物像も良い。

そしてエンドロールにて、本作の原作が1人2役による舞台劇であった事を知り驚愕する。ヨックワンとティンロは映画版では対照的な人物として描かれているが、実は全ての女性が持つ二面性を投影しているのではないだろうか。