ゆき

誰がための日々のゆきのレビュー・感想・評価

誰がための日々(2016年製作の映画)
4.1
絶望の端っこ

変化しなければならない父親が置かれた状況。
変化することを世間に拒まれる息子が追い込まれた状況。
鬱々とした空気が終始漂う中で、子供の無垢さがただ救いになる。
「普通」とされないなら、絶望的な環境から身を逃がせばいい。
香港で実際にニュースになった、エリート青年が母親を殺めてしまった事件にインスパイアされたという今作。
イギリスから中国に返還されながらも、大陸との関係性に揺れる香港が舞台。
父子の周囲で薄い壁一枚を隔てて共存する人たちが、不安定な時代を象徴するようだった。
仄暗い道中で生まれ続ける煩悩と、リセットの効かない時間。
希望の中で生きていた方が楽なのに、人生の外注はできない。
卑怯者になるのではなく、言い訳せずに逃げないこと。
過去とのリンクのさせ方がなんとも秀逸で、ナチュラル。
「普通」ではないとは言い難い息子と対峙する時間が一番ヘビーだった。
実際に同じ空気を吸っているような感覚に陥る作品でした。
邦題が好き。しんどいけど体感すべき100分。

×××
母親の介護を一人背負った息子は心を病み、1年間の入院生活を強いられた。久しぶりに再会した父子は、狭い部屋で二人暮らしを始め共に再起を目指すが…
ゆき

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