柳之貓

ワン・デイ 悲しみが消えるまでの柳之貓のレビュー・感想・評価

4.2
暗めの作品だけど、打ちひしがれた人の心理描写が丁寧に描かれていて、またそれを支える映像やカット、全体に流れる落ちついた音楽が醸し出す雰囲気と、とても良かった。
悲劇がベースになってるんだけど、現実に向き合い、どんな方向性であれ前向きに進んでいく話だから、陰鬱な感じは無かった。

しかし良くないところもある。
先ずいくつかの直接的描写。ヒロインのタン・ミソの天真さや性格、健気な境遇などに好感を覚えている観客にとって、事故シーンなどは余りにも露骨で暴力的だった。
あれは見せないでも成立するはずだし、せめてソンホワの時ぐらいに留めておくべきだった。

もう一つは、まぁラスト。
そこまでは良かった、本当に完璧だった。浜辺では主人公が事実に向き合うシーンなんて、音楽も相まって盛り上げ方が凄かった。そこで一つの昇華があり、物語は収束を迎えるが、問題は直後に差し込まれた「目覚め」みたいなシーン。あれのせいでラストが随分変わって見える。
その結果、違う結末を予想してしまった。それはご都合主義ではあるけど、後味は悪くはない、でも実際はそうはならなかった。
それは理解できる、流れがあるからね。
でもラストの必然性が揺らいだのには変わりない。

もしラストが、それまでと変わりなくて、ミソが傍らから見守っていて…って形だったら良かった。それをああいう形にしてしまったのも、やはり直接的な表現方法に依ったからだと思う。

まぁ、でも良い作品だった。ミソも可愛かったし。自分の愛する人を大切にしなきゃって、思わせられる分には良い映画だった。
柳之貓

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