イチロヲ

笑う男のイチロヲのレビュー・感想・評価

笑う男(1928年製作の映画)
4.0
政治的陰謀により処刑された貴族の青年が、人身売買の整形手術で笑い顔を刻み込まれ、道化としての人生を強いられてしまう。ヴィクトル・ユーゴーの同名小説を映像化している、サイレント期のサスペンス映画。

バットマンの人気キャラ・ジョーカーの元ネタとして有名な作品。「笑う道化師」にさせられた主人公が見世物小屋に所属するため、当時のお祭りの様子と本物の香具師が映像に収められている。大勢のエキストラを配した、大掛かりな撮影も見応え抜群。

主人公は常に笑われる立場であり、なおかつ貴族が繰り広げている縄張り争いの重要人物でもあるため、のっぴきならない状況に置かれてしまう。一座に所属している全盲の少女との、幸せを掴み取れるかどうかのラブ・サスペンスが、やるせなさを生んでいる。

何よりも、「人間は苦難に直面すると、意思に反して笑い顔になってしまう」という生理現象と合わせ鏡になっているところが面白い。人間はどういうときに、何を思って笑うのか、ということを再確認してみるのも、また一興。
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