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笑う男のmのレビュー・感想・評価

笑う男(1928年製作の映画)
5.0
1928年制作のサイレント映画。

とても悲しくてとても美しい、素晴らしい映画だった。映画にセリフはいらないかもと思わせる作品のひとつ。

貴族の息子として生まれながらも、国王の命で外科医に「常に笑っている顔」に整形された少年グウィンプレン。旅回り一座に拾われ、「笑う男」として一座のスター的存在になるが、人々から常に笑われ続ける日々はグウィンプレンの自信を奪っていた。しかし幼き頃グウィンプレンが拾った目の見えない少女デアだけは、心からグウィンプレンを愛していた。そんな中、笑う男グウィンプレンが実は貴族であることが女王の耳に入り、貴族に復帰することが決まる。デアと引き裂かれるグウィンプレンは、自分の存在意義をかけて決死の覚悟でデアの元へ戻ろうとする。物語はグウィンプレンに言い寄る貴族の娘や、邪魔をする貴族などが入り乱れながら進んでいく。

おとぎ話のような明快なストーリーの中に、メロドラマの要素あり、ホラー的要素あり、怪奇的でもあれば最後の方はスタントもこなす剣戟映画にもなるという、色々な顔を持つ作品になっていて、2時間近い作品ながら全く飽きさせない。

グウィンプレン役をやったコンラート・ファイトは『カリガリ博士(1919)』のチェザーレをやった俳優。チェザーレの時はなんかロボットみたいで表情がない役だったけど、今回も「笑い顔」一発で悲しみから怒りから、あらゆる感情を演じ分けているということで、まるで縛りプレイ(演技)の人みたい。

そしてなんと言ってもメアリー・フィルビンが素晴らしかった。可愛いし美しいし健気だし、目の見えない役だったけど本当に見えない人のように見えたちなみに彼女はロン・チェイニー版『オペラ座の怪人(1925)』でクリスティーヌ・ダーエをやっている。

しかし名もなき市井の人たちのエネルギッシュなことと言ったら感動的。粗野でイキイキしている。人間って、これが正しいんじゃないかとさえ思った。現代人は幸せな人を探す方が難しくなってしまっていて、なにが進歩だと思う。

一座の仲間も、最初はグウィンプレンを馬鹿にしている風でありながら、結局最期は「みんな仲間なんだな」と思う優しい奴らだった(みんなデアを愛していたのかもしれないけど)。

やっぱサイレント映画はいい。
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