まや

わたしたちの家のまやのネタバレレビュー・内容・結末

わたしたちの家(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ずっと気になっていた作品。映画館で観られて良かった。映画館の方が没入感をふんだんに楽しめるから映画館で観た方がいい気がする。

1つの家の記憶が2つの世界を繋げる。そんな作品で、確かに物とか家とかってそこにあり続けることで何か想いみたいなものが定着しそうだけど、それをこうやって家を通して世界を繋げる設定がとても面白い。不安感も不穏感のなか、先の展開も全然読めなくてずっと緊張感のある、でも画面が強いからその世界観にすぐ引き込まれた。夢中で画面を観ていた気がする。

父親が失踪した母と娘の2人と、フェリーで出会った記憶を無くした女性とそれを助ける女性2人。この2つの世界が1つの家を通して交互に描かれていく。それが徐々に同じ家が時間を引き合わせるかのように繋がり、最後にはそれぞれの世界では存在し得ないものがそれぞれに表れる。

母娘の物語は結構心情が読み取れる感情的な物語で、再婚を告げられた後に父を象徴するようなツリーを後ろに乗せて自転車で一本道を疾走する娘のシーンからすごくじんわり悲しみがきた。ツリー持って海に行き、そこで土に刺したら、つかなかったツリーの電気がつくところすごく良かった。娘に寄り添う優しいシーンだ。(母娘の洗濯物のシーンもじんわりきた)

女性2人の物語は誰1人として信用できる語り手がいない、本質を明かさないからか全ての登場人物が怪しく存在感のなさがハラハラさせられてこちらも異なった展開で飽きさせないのも良い。(透子役の方が個人的に好き。服と声が良かった)

また、1番大事な家。この家がかなり変わっているからこそ成り立つ。台所が映るシーンが多用され、そこで世界観が切り替わったりする。その撮り方に小津っぽさを感じて、家そのものが登場人物のようだった。

音楽や家の記憶のように囁く声が交錯して2つの世界がどんどん混じり合って同じ世界線に繋がりそうになる展開も徐々に近づいてくる怖さがあった。(最後の花瓶までのシーンはホラー映画みたいにジワジワと迫るカメラワークのように感じて普通に怖かった)

確信には近づかず、ずっと何か起こりそうなシーンが続いていく展開はこの監督特有の世界観なのだなと思った。確信が描かれないのでここで終わらないでというところで終わってしまう感じ。もっと観ていたくなるように引き込んでくるのはすごいな。映像的なセンスとどう語るか何を語らないか、何を使って語るか、これらの絶妙なバランスが全て合わさってこの世界観を作っていると思うとすごい感覚を持つ方なのかなと思った。

かなり映画的には楽しめたが、何かを受け取る、何か意味を見出すという感じではなくこの世界観を楽しむ監督なのかなと思った。個人的には何か答えがあったら更に好きになるかもなと。(でもそれをするとこの世界観を崩しかねないか...)
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