ぼっちザうぉっちゃー

勝手にふるえてろのぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

綿矢りさ原作、やはり面白い。この方の作風かなり好きかもしれない。是非また何か読んでみたい。女性監督との親和性が抜群なんだな。

とにかく主人公の松岡茉優が完璧な適材で、根っこに学生時代からの陰を色濃く残す少し痛々しいようなサバついた女性のリアリティがその内側からしっかり滲み出ていた。
そうした様を前半部分においてはただ陰鬱なのではなく、奔放なお喋りでコミカルに吐き出す姿が面白く、ひょんな刺激にしっかり感化されたり学びを得て動き出す行動力も生き生きと表現されていて楽しかった。女目線で明け透けに語られる恋愛観や女子の雑魚寝部屋を覗き見たりするような様子も面白かった。

そしてそういったファニーでのぼせたような雰囲気を覆すのは、過去であり理想であり一である彼の「名前何?」という現実の一言。その冷たく圧倒的な破壊力。
そこからなし崩し的に、現実の人間臭い二とある種普通の恋路みたいなものを歩んだりもするのだけれど、どうしてもそれを阻むのは自らが歪に進化する過程で積み上げてきた見下げ果てるほどの「高潔さ」。“処女を可愛いと思う男なんて大ッ嫌い!“
こうして絡みつきとぐろのように巻き付いたコンプレックスを、息も絶え絶えにほどいていくような痛切な恋模様。
経血あるいは処女膜のメタファーとも思える赤い付箋が剥がれ落ち雨に染まっていく様子にそれは表されているような気がした。


彼女は言った。

惚れた腫れたの色の道、私はあなたが好きで理解者で、そんな事はとんだ思い上がりの上から目線。傲慢で震えがくるわ。

だったらと彼女はまた言い放つ、

「勝手にふるえてろ」


キスをした。