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レディ・マクベスのmaverickのレビュー・感想・評価

レディ・マクベス(2016年製作の映画)
4.2
2016年のイギリス映画。ロシアの作家ニコライ・レスコフの小説「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を映画化した、フローレンス・ピューの初主演作。


人間の欲望のおぞましさを感じさせるエグイ内容であり、フローレンス・ピューの迫真の演技がそれを倍増させる。『レディ・マクベス』のタイトルが相応しい。女性が男性の道具のように扱われる時代で、主人公のキャサリンには同情もする。だが彼女は不自由な生活の中においても自分の欲望を抑えることをしない。その行動力は現代の力強い女性像にぴったりかと思いきや、その代償として多くの者の人生を狂わせる。巻き込まれる側からすれば、彼女の存在は暴君そのものである。

この時、若干20歳のフローレンス・ピュー。これが映画出演2作目でありながら、すでに貫禄は十分で驚く。本作では一糸まとわぬ姿も披露し、堂々たる風格で主人公を演じている。発音や見た目が現代人っぽいところにイマイチさはあるが、存在感と演技力においては何の申し分もない。本作で批評家から絶賛されたのも納得で、後の『ミッドサマー』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で大ブレイクする片鱗を存分に感じさせる。悲劇的な可哀想なヒロインから、欲望に狂い落ちてゆく暴君への変化が圧巻であった。

従順な使用人アンナも、本作において重要な役。彼女の立場から見れば、キャサリンの暴君さも一層引き立つ。彼女は被害者でしかないのだから。演じるのは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』では元ストームトルーパー兵士のジャナを。『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』で、ホイットニー・ヒューストンを演じたナオミ・アッキー。本作は彼女の出世作でもある。このアンナ視点の本作のスピンオフを作ったら、とんでもなくエグイ話になるのは間違いないだろう。


フローレンス・ピュー目当てで鑑賞したが、その存在感は凄まじく想像以上だった。中盤の情事が続くあたりはやや退屈だったが、後半のおぞましさに一気に釘付けになる。人間とはかくも恐ろしいものかとゾッとする。見応えのある作品だった。
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