現在は生放送で感想中の丈兄丸

月と雷の現在は生放送で感想中の丈兄丸のネタバレレビュー・内容・結末

月と雷(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

知人の高評価が気になり、自分にしては珍しく先に予告を見て、雰囲気も良く、また地元の劇場の上映タイミングが都合良かったので、予約。
しかし交通渋滞に合い、劇場に着くまでにいつもの倍近く時間がかかったため、上映が始まって20分ほど経ってからやむなく入場。
途中から入った自分が最初に見た光景がセックスシーンだったので、ちょっと戸惑ったが、予告やあらすじで見た知識を思い返しながら、何とか主役二人の関係図についていこうと集中…

無論冒頭から見れなかったのは痛いが、それでも最後まで見て大体は内容は味わえた(つもり)なので、恐縮ながらあえて、この半端な初見体験も含めてレビューしてみる。というか、結論から言えば自分にとっては、少しでも書かずにはいられないものを見せてもらい、今作という映画を通して、新たな視野が広がる体験をさせてもらえた。


具体的なシーンの分析と記述が難しく、また私自身それらが得意ではないので、
上手く説明はできないが…
今作を通して自分が感じ得られたものは、主に主役の泰子を通して”女性が生活していく難しさ”だったのかなと思う。
私自身、恐らくは自他共に認める、男に生まれてよかったなと言える性格で、面倒事が大嫌いの身勝手な人間だ。映画に限らず、日常の中でふと女性の生活を見ていて、”女って大変だな、俺は男でよかった…”と思うことが多々ある。

そんな女性の気持ちに疎い自分が、今作を見てくうちに、まるで自分が泰子になったかの如く、周りが勝手に運んでくる面倒事が描かれるに連れ、ドンドン不快になっていく。
特に、妊娠してから吐き気や怠くなる泰子の描写が、初音映莉子さんの演技力も相まって、見ているこちらまで気分悪くなりそうだった。感情移入している一方で、“女性って、こんな大変だったんだな…”と、頭ではなく、体験的に感じさせられた。

自分にとって、映画などを通してこういう気持ちをさせられたのは多分初めてなので、私にとってはこれだけでも、この映画は忘れられない心の一本になったと思う。


また智と直子に関しても、泰子からすれば許せない(自分が泰子だったらあんなに優しく相手できない苦笑)人間である一方で、
しかしどちらかといえば自分も彼らのような風来坊気質な人間なので、特に最後の直子と泰子のくだりは、終始上手く言葉にさえしなかったが、直子なりに、ああした今までの言動が、
きっと留まって真面目に過ごすよりはずっとマシな選択と思考するようにならざるを得ない人生を送ってきたのかな…と、
どこか同情させる生々しさがあり、そうした人生観に結局、突き返しきることができない切なさや儚さを感じさせた…。


この世には、吐いて捨てるほど、様々な人間と、それだけの出会いがある。
しかし、自分の人生はただ一度きりで、誰一人同じように生きることもできないし、当事者になることもできない。だから、本当は”こうしたら上手くいく”なんて成功術は上手く活かせる人のが圧倒的に少ないだろうし、その苦しみを綺麗に分かち合えるほど、人間及びその社会は、器用に生きていけるものではないのだろう。

今作は、そんな生きにくい境遇に、更に掻き乱されるような事態に合う女性が、そこから何と・どう向き合って、どんな未来を選択するのか…
ありふれてるかもしれないが、しかし間違いなく貴方にしかない道…という一例を見せてくれたような、
生々しくも捨て切れない人生観を感じさせる一作でした。