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アネットのRMのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
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エンドロールでカラックスを含めた出演陣がまるい照明を持って行進する。「映画が気に入ったら 友達に教えてね 友達がいなければ 見知らぬ人に教えてね」と言うけれど、私はこの映画を気に入りすぎて、まだ誰にも教えたくない。考えが整理できたら、後日レビュー追記。
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鑑賞後5日経過のレビュー。

ヘンリーのコメディにはひとっつも笑えない。妻のアンには、くすぐることで笑わせている(物理)。直近で観たカサヴェテスの『フェイシズ』でも、「その気になれば笑わせられる」「どうかしら」という夫婦の会話があったのちに破綻に向かっていくのだけど、女性を笑わせられることが男性にとってすごく意義のあることなんだなと思った。笑顔は分かりやすく幸せの象徴。笑うことは良いことに決まってるじゃん、みたいな、自分のものさしを他人にあてがうエゴが窮屈で高圧的。彼はクズだとひと言で片付けることもできるかもしれないけど、自分はヘンリーのようには絶対なりませんと断言できるかと聞かれればできない。人間はいつも不器用で不確かで簡単に快楽に傾く。

アネットを人形で表現したことに度肝抜かれた。それはアネット自身が実感していたのと同様に、ヘンリーも彼女のことを見世物として見ていたから。ラストの面会のシーンで、彼女はやっと人間になれた。「あなたは誰も愛せない」と娘に言われる父親、これほどに酷なシーンがあろうか…。愛されないんじゃなくて、愛せない。

老婆心ながらののかちゃんのことが心配になる。
ヘンリーの過去のハラスメントを訴える女性たちの中に水原希子をキャスティングしたカラックス、承諾した水原希子、通底する感情を深読みしてしまう。

"ナスティアに捧ぐ"
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