世界的人気を誇るハリーポッターシリーズのエンディングと言えば、年度末パーティーで優勝寮が発表され、祝杯を挙げる大円団で幕を閉じる印象が強いが、このグランドフィナーレに祝祭感はない。ダークでシリアスなシリーズ後半の数作品にいまいち乗りきれないファンも多いかもしれない。自分もその1人だった。
物語はハリーポッターとボルデモートを取り巻く恩讐をきっかけに、魔法界全体を混乱に陥れていく。その破壊の程度が深刻過ぎたために、いつの間にか作風も初期の子供向けファンタジーからダークホラーに転じたが、それゆえのビターなエンディングに今回ようやく肚落ちした。
宿命としてハリーは初めから勝者だったし、ボルデモートは初めから敗者だった。それはハリー1人が勇敢だったからではない。ハリーを取り巻く人々が彼に与えた愛が、ボルデモートの闇に勝るものだった。それでも闇を鎮める過程で皆あまりに多くのものを失った。祝杯をあげるべき成果もない。善はただしんどくて、悪に比べて魅力もない。
この物語に英雄がいるとすればスネイプだと思う。彼は自ら立てた誓いの為に自分を捨ててみせた。希望も善悪もない場所に身を投じた。その生き様を恥じ、最後まで己の情を内に秘め、ただ使命のために生きた。その美徳は本当に尊い。美しい生き様って相当しんどい。マルフォイ家から感じる上流階級の悲哀もまた然り、ビターな余韻が残った。