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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2のYのレビュー・感想・評価

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泣ける場面が死ぬほどあった。

過去7作のフラグを怒涛の勢いで回収し、これでもかというほど観客を圧倒する。

王道の展開ではあるけれども無駄が無く、観客に媚びるようなあざとさもない。キャストや原作者J・K・ローリングが世界観を徹底して守り切ってくれた約10年間の集大成として申し分ないラストでした。

今作に登場する呪文や道具 (バジリスクの牙や必要の部屋、金のスニッチなど) は、全てが各エピソードを懐かしむためのスイッチになっています。そのスイッチを押される度に観客は「あ〜〜〜😭」となってしまうこと請け合いです。

あまりにも愛の物語。
ハーマイオニーやロン、ダンブルドア先生やハグリッドのように、ハリー自身が在学中に獲得した目に見える愛。
従兄弟と叔母夫婦にいじめられ、たった一人だと思っていた日々にも、実はずっとそばにあった両親の目に見えない愛。
敵として、時が来るまで遠くから見守り続けた鋭い眼差。
1作目のセブルスのあの強烈な目線にはたくさんの愛と哀しみがいっぱいに詰まっていたのだと今作で思い知る。

ダンブルドアとセブルスの会話の中で
「このことは誰にも言わぬよう…」
「セブルスの1番良いところを秘密にするのかの?」という部分は本当に胸が痛かった。痛みなど感じないかのような表情の裏でズタズタになっていたなんて、一体誰が感じ取れたでしょうか。

憂いの篩の中、誰よりも愛に脆いセブルスが打ちひしがれるシーンは、今シリーズのどんな要素よりも「愛」でした。ダンブルドアにリリーの身を守って欲しいと懇願する瞳に浮かぶ涙の膜や抑えきれずひたすらに溢れていく哀しみが、どうしようもなく苦しい。

そんなたくさんの愛に包まれたハリー。
禁じられた森に出向くときのハリーの表情に、「死ぬ覚悟」という強い決意よりも「死の受容」という感じの穏やかで柔らかな色が見えたことに驚きました。
身の回りの数々の大きな愛を知り、ハリーの顔から恐れの色が薄れる。死の秘宝の三兄弟の物語の3番目の弟のように、死さえをも受け入れたのかもしれません。

おっちょこちょいで少し鈍臭いネビル。彼の初期の姿は、グリフィンドールの特徴である度胸や大胆さとはかけ離れたような印象でした。そんな彼が今作で、好きな人へ愛を伝え、敵に勇敢に立ち向かい「真のグリフィンドール生」として剣を手に取り分霊箱を破壊しました。ああ、これが彼のグリフィンドール生としての才能であり組み分けされた所以なのだなと。非常に感慨深かった描写です。


小学生の頃から一緒に大きくなってきたという意識があり、どうしても思い入れが強い作品です。吹き替えのセリフを一言一句、完璧なタイミングでそらで言える同級生もたくさんいるほど、何度観ても、いつ観ても味わい深くて素敵な世界。
どうしたって愛しい作品ですが、ここが区切り。ハリーもみんなも本当に頑張った。

ルーモス
Y

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