ベンジャミンサムナー

屋敷女のベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

屋敷女(2007年製作の映画)
4.0
 『エイリアン』と並んで、いや、それ以上に観てるとお腹がヒリヒリしてくる映画。

 たった83分で家の中が満遍なく血で染まる映画って他にないんじゃないか?

 本作のスプラッター表現はリアルさとケレン味のバランスが絶妙。

 ベアリトリス・ダルが妊婦のヒロインのお腹にハサミの刃をスス〜っと這わせて、へその凹みに引っかかったところでグッとハサミを押し込む描写なんかは妊婦じゃなくても痛さが伝わる。

 物語後半からヒロインが立て籠もるのが、血が映える白いバスルームなのも分かってる。

 ベアトリスが銃を拾い、それで襲ってくると予想させておいて、観客の想像よりも早いテンポで警察の頭を撃ち抜く(しかも『スキャナーズ』の頭破裂シーンバリのケレン味)虚の突き方も良い。

 Jホラーの如くベアトリスが画面奥に佇んでる時のうっすら加減も絶妙。
 途中で殺されたはずの警官が生き返ってヒロインを襲う謎展開があるが、監督がストーリーの脈絡と関係なくただ「ゾンビ要素を入れたかっただけ」というのが、呆れつつも微笑ましい。

 ベアトリスは元々怖い顔立ちだけど、後半で顔が焼けただれることでよりモンスター的な風貌になるのも良い。

 …だがしかーし!
 「妊婦のお腹を切り裂くシーン」ありきで作られた映画なのに、自分が観たレンタルDVDはそのシーンが真っ黒モザイク!

 あ、でも階段上でお腹を切り裂くことで、チョコレートフォンデュみたいに血が段差を流れていくのはよかった。

 映画において、人の身体に刃物を突き立てる瞬間はアップの画でごまかしがち。(本作でいうとサラの上司の股間に裁ちバサミを刺すところ)
 だけど、襲われる相手を妊婦にすることで、「膨れたお腹」という外付けの部位を切り裂く場面を引きの画でごまかさずに見せたのが、スプラッター映画としてコロンブスの卵級の発明!

 これから日本で本作のノーカット版が劇場公開予定だが、自分の地元では100%上映されないだろうから、そのうちBD出してくれ!
 
 あと、去年単館上映された『ポゼッション 40周年HDリマスター版』のBDはいつか出るのだろうか?