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盗まれた絵画の仮説
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『盗まれた絵画の仮説』に投稿された感想・評価

フランスのシュール系監督ラウル・ルイスと異端作家ピエール・クロソフスキーによる共同脚本の二作目。撮影は「去年マリエンバードで」(1961)のサシャ・ヴィエルニー。ジャン・レノが映画初出演。

取材班のカメラが美術品収集家の屋敷に入っていく。収集家(ジャン・ルージュール)は19世紀の画家フレデリック・トネール(※架空)の7枚の連作のうち6枚を所有している。4枚目は失われ何が描かれていたかは誰も知らない。収集家の目的は、連作全体の意味を解明するために残りの6枚の絵の相互関係を通じて失われた絵画を再現することである。これを達成するため、彼はモデルを雇い、小道具を調達し、照明を設置して、現存する6つの場面のそれぞれを「活人画」として再現。それを独自の分析で解釈し“連作には秘教的カルトのコードが隠されている”との仮説を披露する。インタビュアーはその陰謀論的な説に疑問を投げかけるが。。。

ルイス監督の「Three Crowns of the Sailor」(1983)がなかなか面白かったので引き続いて鑑賞。

凄く好みだった。耽美的コメディというか他にはない一本。シニカルな批評性を孕んでいて、例えるならブニュエル監督の脚本とジョルジュ・フランジュ監督の耽美映像を掛け合わせたような印象。

ブニュエル監督が宗教的権威に疑問を呈していたのに対し、本作はフランスの“芸術映画と批評”の権威に矛先を向けている。重厚な面持ちでご高説を披露する収集家の背後で、モデルたちはマネキン状態を維持できずゆらゆらしたり大きな瞬きをしてしまう。その滑稽な姿にブレッソン監督“シネマトグラフ”(笑)のモデルたちを連想する。実際、クロソウスキーはブレッソンの「バルタザールどこへ行く」(1966)に出演しており、その経験が脚本に反映されていると考えても無理はない。

収集家は連作を再現した活人画の「指先」や「鏡」、「光の指す方向」に注目、そこに自身の衒学的知識を重ね合わせて意味付けし独自の誇大妄想を繰り広げる。その姿は記号論に囚われる表層批評派そのもの。個人的に、表層批評と陰謀論の思考パターンは同じと考えているので、本作での徹底した揶揄にはつい笑ってしまった。

インタビュアーに妄想だと突っ込まれても、神妙な面持ちでトンデモ解釈を語り続ける収集家。静止状態を維持させられて気の毒なモデルたちの間をゆったりと歩き、結局は答えを出せぬまま尊大なムードで退場するラストまで完璧。

ルイス監督にますます興味を持ったので、そのうちに後期作を観てみたい。ピエール・クロソウスキーについては小説『バフォメット』(1965)の題名しか知らなかったが、これを機に注目していきたい。

※ジャン・レノが演じているのは活人画の中の丸眼鏡をかけ髭のある長身の人物

※脚本ピエール・クロソウスキーは前年の「ロベルトは今夜」(1977)と本作でそれまで積み重ねてきた自身の硬直した価値観をセルフパロディとして描く事で解体し、以降は言葉を捨て画家として現代美術の世界に転向した。

※サシャ・ヴィエルニーはそもそもブニュエル監督「昼顔」(1967)や「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(1972)の撮影監督

※ルイス監督については日本版の書籍がなく、ネットでの論評も欧米サイトでは沢山あるのだが日本のものは殆ど有効なものが見つからない。本人のインタビュー本が日本で翻訳されることを願う。
今まで見たラウル・ルイスのベストにして超絶傑作。
絵の収集家が、絵の解説をしているうちに絵の世界に入っていく映画。この迷宮感!
前回観た『盲目の梟』よりもさらにボルヘス的。っていうかボルヘス!
良い。
絵画の中の人物という設定のはずが、長回しのせいでプルプルしてるのはちょっと笑ってしまう。