MasaichiYaguchi

恋と嘘のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

恋と嘘(2017年製作の映画)
2.6
マンガアプリ「マンガボックス」で連載されたムサヲさんの人気漫画を、原作とは逆設定のアナザーストーリーとして実写映画化した本作では、「超・少子化対策法案」が施行されている近未来を舞台に若者たちの「幸せ探し」が描かれていく。
この「超・少子化対策法案」、通称「ゆかり法」は、政府が国民の遺伝子情報を分析し、16歳になるとベストマッチングな結婚相手を“政府通知”で斡旋するというシステムなのだが、ある意味、自由恋愛を排除するものになっている。
本作のヒロイン、仁坂葵は対象の16歳になって、政府通知で総合病院の御曹司、高千穂蒼佑という“玉の輿”を斡旋されるが、気心の知れた幼馴染で友情以上の感情を持つ司馬優翔との間で心が揺れていく。
この作品は、結婚という一つのゴールを目指した若者たちの恋模様を通して、「本当の幸せとは?」を描いていく。
ただ作品の設定、政府が16歳という成人前に結婚を斡旋するとか、更に女性にとって結婚が最上の幸せでゴールのような扱いとか、全てにおいて前時代的で共感出来ない。
確かに日本では少子化が進んでいるが、世界的観点では人口爆発という危機的状況に陥っていて、政府が早婚化を助長させるなんて有り得ない。
本作の「超・少子化対策法」は、私には1941年に閣議決定された人口政策確立綱項に基づく「産めよ増やせよ」というスローガンを思い出させる。
原作漫画は若者に人気でアニメ化もされているが、時代錯誤的な要素を持つ作品が持て囃されるのは、戦前回帰の動きをしている社会を反映しているのかと考えてしまいます。