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映画ドラえもん 新のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜のdm10foreverのレビュー・感想・評価

4.0
【メカの惑星】

先日鑑賞した「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」の流れで、ここ数日は息子と一緒に「ドラえもんウィーク」。
ちょうどアマプラで過去作を一気に配信してくれているということもあり、タイトルをザ~っと眺めながら「あ~これはお父さんがお前くらいの時に爺ちゃん(つまり僕の父)と一緒に映画館で観たやつだよ。懐かしい~」なんて話にも花が咲きます。
そう考えると、「ドラえもん」というコンテンツが色んな時代に寄り添いながらも、本質を見失わないまま50年も続いて、なおかつその時代時代の人々から愛され続けているって、実は凄いことなんだな~って改めて感じますね。

考えてみると、この頃は結構「ドラえもん映画」に行っていたような気がする。
これも親父と行ったような記憶・・・薄っすらと。
たぶん劇場で観た気がするんだけど、友達とドラえもんを観にいったような記憶はないので、やっぱり親父とかな・・・っていうくらいのおぼろげな記憶。
だから、内容も殆ど覚えてないくらい(笑)

ということで、今回は2011年に公開された「リメイク版」を息子と鑑賞しました。

なんとなく「カッコいいロボットが出てくる→近未来的な話」っていうあたりで「~宇宙小戦争」とごっちゃになっていた部分もあって、今回の一連の鑑賞で僕の記憶も整理されました(笑)

で、肝心の物語なんですが。
やっぱりこれもテーマが深いですよね、「~宇宙小戦争」でも感じたけど。
それこそ表面的には子供のアニメ映画って言う仮面を被っているけど、『マイノリティ』『差別』『数の論理』『分かり合えない相手への実力行使』っていう、人間の罪深い側面について結構踏み込んでいると思いました。

オリジナルの細かいテイストは忘れてしまったけど、同じテーマについて描いていたのだとすれば、藤子F先生の中には「未来の子供たち」に対する希望と同じくらいの不安がぐるぐると渦巻いていたんじゃないかなって察してしまう。

物語ではロボットを隠すためにドラえもんが出した『お座敷つりぼり』という道具を使う。
そこから覗いた「鏡写しの世界」では文字通り全てが逆転している。
絵的には「見た目の逆転」だけど、面白いのは「価値観」まで逆転しているというメタファーになっていたこと。
つまり「人間→ロボット」という支配の構図もまるで逆転していくように描かれているんですね。
ただ、この辺の描き方はとてもスムーズで大人もいちいちそこまでメタ的な事を気にしなくてもすんなり入っていけるな思っていました

そこで子供たちの目線まで降りて考えたこと。
ここで「人間がロボットを創ったんだから、人間の方が上なんだ」という理論は通用するだろうか?
というか、そういう結論に持っていっていい話なんだろうか?

ロボットたちは本来人間が楽をするために「道具」として生み出したものだけど、技術の進歩とともに「AI」などによる「自我」を持つようになる。
そこに創造主が「競争」という意識を埋め込んだことが未来を変えてしまう。
「競争」は、文字通り他者と競い合いながら互いを切磋琢磨して向上していくという結果にも繋がるが、行き過ぎた競争意識はやがて「強者」と「弱者」を生み出す。
そして強者は弱者を支配、排除しようとする。
結果的にどうなるか?
「競争」は「戦争」へと繋がっていくことになるんですね・・・。

そして起こるべくして起こる「支配に対する抵抗」という戦い。

出発点まで戻れば、人間は自分たちが辿ってきた歴史からカウンターパンチを食らったような物語とも言える。ターミネーターなんかも結局はそう。

子供向けの空想SFアニメという、甘めのコーティングの下には「寓話」として身につまされるようなビターなテーマがキチンと内包されている。
それであって、子供たちの心にも丁度いい温度で着地させてくれているのはさすが。

単に「侵略されたなら、一体残らず駆逐してやればいい」というアメリカンな発想に持っていくのではなく、「僕の手は君を殴るためじゃなく、抱きしめるためにあるんだ」的な友愛談に落としてくれるので、大人からすれば若干「ぬるく」感じるくらいの温度が、子供たちには丁度いいんじゃないのかなって気もした。

人間の手によって生まれた業は、同じ道を辿ろうとしていたロボットたちにも圧し掛かる。
力による一方的な支配は人間であれロボットであれ「正しくない」という一貫したラストに救われた気がする。

これを「のび太たちの勝利」を持って一件落着にしないところがドラえもんが愛される所以なのかもしれない。



あと、今回登場したリルルという謎の少女の声を演じていたのが沢城みゆきさん。
先日まで息子とどハマリしていた「鬼滅の刃遊郭編」で堕姫を演じていたって事もあって、そのふり幅に改めて驚かされました。
息子に言っても「ほんとに?全然わからなかったよ」と眉唾な様子。
そして何度もシーン再生を繰り返して「あ、ホントだ。言われてみれば確かに堕姫かも・・・」と。
それこそ、演じ分けがうまい証拠ですよね。
たいしたもんだ。
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