ふじこ

はじまりの街のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

はじまりの街(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

夫からのDVに耐え兼ね、ローマから友人を頼ってミラノに避難してきたアンナ。DVの現場を見てショックを受けた13歳の息子ヴァレリオと一緒に友人の家に居候する。
ヴァレリオは学校や友人全てを置いて突然移住する事になり、友人も知り合いもいない街を買って貰った自転車で走り回るのみ。
その中で知り合った斜向かいのカフェのオーナーと、路上で客を取る外国人の売春婦を通じて、親の都合で一人になってしまった少年の一冬のお話。


悪いのは親父だけなんだよね…。暴力を振るわれて我慢できなくなったアンナは何も悪くないのだけれど。
しかし息子にしてみれば、父親が暴力を振るう場面は確かに見てしまったのだけれども、全てを捨てさせられて父親と連絡を取ることも出来ず、見知った人の誰もいない知らない人の家で、個室もなく生活する事になってしまった戸惑いも分かる。
ちょっと好きになってしまった娼婦とデートをして良い気分になった結果、彼女が客を取って行為に及んでいる姿を見てショックを受けてしまうのもまた、幼さを頭に入れるとさぞやショックだった事と思う。
そうして母親に当たってしまうところも分かる。これが居候先の母親の友人だったら絶対そんな事しないんだろうと思うんだけど、母親相手だと思春期のパワーもあって辛く当たってしまうんだよね…。
母親は自活する事に必死で、息子のことをとてもとても愛しているのは分かるんだけど、息子が求める部分の孤独を埋めてあげる事は出来ない。そこには本来ならば友人や彼らとする楽しいこと、好きな子なんかが入る場所だから。

どうかこの子の孤独を汚してくれるな、と思いながら観ていたけれど、子供は子供なりの立ち直り方や気遣いで大人になっていく。
そこのさじ加減が絶妙で、なかなか良かったなぁって思いながら観終えた。

最後の歌も良かった。同じアパートに住む同年代の子にサッカーに誘われて楽しそうに駆けていくヴァレリオと共に、
あぁ人生よ、この世に人生よりいいものはないわ
でも人は知らない、知りもしないのよ
あぁ人生よ、この世にこれ以上のものはないわ
あぁ人生よ、人生よりいいものはない
でも誰も気付かない ほとんど誰も
それが人生

と高らかに歌い上げる声と、空に昇っていく気球が映されて終わり。
爽やかで良い終わり方だったなぁって思う。
ふじこ

ふじこ