けんさん

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスのけんさんのレビュー・感想・評価

4.5
この作品もフォローさせていただいている方の一押しの作品と言うことで、満を持して鑑賞したが、まるで編み物のようにじっくりと、ゆっくりと感動が紡がれるていく素晴らしい作品だった。

この作品はカナダの有名な画家であるモード・ルイスと夫のエベレットを描いた実話(残念ながら知らなかった)とのことだが、ストーリー自体には大きな起伏がない中でも、これだけの感動を受けることができたのは、何と言っても主役となるサリー・ホーキンスとイーサン・ホークの名演技に尽きると思う。

二人のちょっとした仕草や行動、また言葉少ないながらも交わす会話に、お互いを想う心の変化が垣間見える演出は見事としか言いようがない。

特に二人がささやかな結婚式を挙げた夜、家に戻り、静かにダンス踊るシーン。

エベレットの両足の甲にモードがつま先立てた足を乗せて躍る映像に、足の不自由なモードを気遣うエベレットの優しさが溢れ、「なんて粋で素敵な演出なんだろう」と感動した。

もしこれも実話だったとしたら更に感動が増す。

お恥ずかしながら、この作品を観るまでは主役のモードを演じたサリー・ホーキンスと言う女優のことは全く知らなかった。

こんな素晴らしい役者さんがいたのか?と言う驚きと同時に新しい発見ができて、それだけでも満足ができた。

また、エベレット演じるイーサン・ホークも本当に良かった。

勝手な思い入れかも知れないが、多くを語らず、表現が不器用でありながらも時々垣間見せる優しさが、大好きなけんさん(高倉健さん)とダブってしまった。

いや、自然溢れる少し寂しげな片田舎で繰り広げられる作品自体の設定が、健さんの作品と似ているところから、更にそう思ってしまうのかも知れない。

いい映画を観ると本当に心が豊かになる。
そう思わせてくれた静かなる感動の作品。
けんさん

けんさん