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デトロイトの一人旅のレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
5.0
キャスリン・ビグロー監督作。

1967年に発生したデトロイト暴動の全貌を描いたサスペンス。

『ハート・ロッカー』(2008)『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)の女流監督キャスリン・ビグローが、1967年7月23~27日にかけてミシガン州デトロイトで発生した大規模な暴動の顛末を事実に基づいて描き出した傑作サスペンスで、暴動発生の原因となったデトロイト市警による違法酒場の摘発に始まり、警官の横暴に対する黒人住民の不満が略奪や破壊となって表面化・大規模化していく中で、オモチャの銃による発砲を本物の銃によるものと勘違いした警官たちが黒人宿泊客で賑わうモーテルに突入し丸腰の彼らに対して法を無視した過酷な尋問を強行していくさまを(アルジェ・モーテル事件)、緊張と迫真性に満ちた描写でスリリングに映し出しています。

デトロイトは黒人住民が多数を占める工業都市で白人は少数派です。警官の標的となった酒場は時間外の営業を行う違法酒場で、やはり客層は黒人が大半を占めていました。そんな中、黒人たちが退役軍人を祝うため集った酒場に、白人警官を含めたデトロイト市警が手入れを強行します。それに反発を示した黒人の見物人が普段から警官に対して抱いていた不満を近隣店舗の破壊や略奪、放火といった行為に発展し、やがてデトロイトの街全体が騒乱状態に陥るほどに大規模化してしまったのです。本作はデトロイト暴動の発端から大規模化までのプロセスを再現しながら、アルジェ・モーテルに突入した白人警官が黒人宿泊客に対して違法な尋問と暴力・殺害行為に至った経緯と事件後の裁判の行方を描いています。街全体の状況変化と警察・州兵の動向を克明に追った前半から、アルジェ・モーテルにおいて白人警官の非道な行いが明らかにされる密室サスペンスへと物語の舞台が収縮していく構成です。

多人種国家アメリカに内在する白人の差別・優位意識に対する黒人の不満がある夜一挙に表面化していく様子と、それを暴力という理性を欠いた手段で抑え込もうとする白人の暴虐的行為をドキュメンタリータッチに再現した社会派サスペンス。事件を第三者の立場から目撃する民間警備員:ジョン・ボイエガ、差別主義者の白人警官:ウィル・ポールター、事件に巻き込まれる黒人シンガー:アルジー・スミスが魅せる迫真の熱演に魅了されます。
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