エアール

シェイプ・オブ・ウォーターのエアールのレビュー・感想・評価

3.8
お前は…神なのか
マイケル・シャノンが言い放つセリフが頭から離れませんね 笑

ギレルモさんが監督・完全オリジナル脚本・製作と、
作品への入れ込みようが半端じゃない、プロモにもかなりの時間とお金を割いてるようですしね。
自身も公言してるように、愛しすぎて止まない作品みたいですから
まあそうなりますわな 笑

さて
人間と人間ではない特異な生物との間に芽生える、異種間の恋を描いていて
ギレルモ監督の作品の中ではラブ・ロマンスが強めの作品となりました。
映像美、詩的パワー、ファンタジー要素を織り交ぜたことで幻想的ながらも、強いメッセージ性を感じ取れる脚本・演出、キャストの芝居、スタートとエンドをお伽話風にもってくあたりも良かったです。
そこについてはパンズ・ラビリンスを彷彿とさせる場面でもありました。

主演を務めたサリー・ホーキンスの体を張った芝居はもちろん、
エイブ・サピエン、ペイルマン、バイバイマン、そしてお次は人間ではない、特異な姿をした謎の生物と、
もう演じるのは彼しかおりません、ダグ・ジョーンズ 笑
人外ばかりを演じることで有名ですが
またまたやってくれました 笑
ギレルモ作品にも常連ですしね‼︎
次は何を怪演してくれるのやら…、
ホーキンス演じるイライザの友人であるゼルダことオクタヴィア・スペンサー、
イライザの同居人で、孤独な絵描き ジャイルズにはリチャード・ジェンキンス、
イライザと生物くんを追い詰める、敵対役になりますストリックランドにマイケル・シャノン、
みなさん素晴らしい芝居を披露してくれますが
特筆するならジェンキンスでしょうかね。
イライザの良き話し相手で、家族同然である彼の存在は作品中でもちろん大事ですし、やはりベテランから滲み出る、違和感のないハマり具合、これが絶妙でした。


米ソ連冷戦下の1962年
航空宇宙研究センターで夜間清掃人として働くイライザ
ーー幼少期のトラウマが原因で、彼女は話すことができない。
聴覚に異常はなく、相手の言うことを聞き取ることはできる。

ある時
ストリックランド率いる、新しい研究者と対象物がセンター内に運ばれてくる
ーーどうやら極秘研究のようで
南米の汚れた川からボルチモアへと厳重体制で移送されてきたのは、
アマゾンの部族が神のように崇拝していたという、謎の水生生物であった。
これが”彼”とイライザとの運命的な出会いとなるのです。

水生生物の”彼”の美しい容姿に目も心も奪われたイライザは
その後頻繁に”彼”に会いに行くようになる。
”彼”には知性が備わっていて
ーー相手の言ってることや視覚情報と認知、感情を読み取れたり、音楽にも反応を示す、など
”彼”にどんどん夢中になっていくイライザ。

話せないイライザだが
”彼”とのコミュニケーションにおいて言葉は不要で
ありのままの自分を見て、そして受け入れてくれる”彼”に特別な感情を抱くようになる。
また”彼”もイライザに対して、警戒心を解き、心の繋がりを築きはじめる。

そんな矢先
米政府は、ソ連を出し抜くカギである”彼”を使って
実験を行うつもりであることを知るイライザ
ーー生体解剖を施し、組織構造の解明を図るか、
人間の姿に近い”彼”を宇宙に飛ばしてみるか、など。

残された時間がそう多くないことを悟ったイライザは
”彼”をセンターから逃がすために
同僚のゼルダや友人兼同居人 ジャイルズに協力を要請する。

ソ連からの二重スパイという、予期せぬ協力者の助けもあり
なんとか”彼”をセンターの外へと連れ出すことに成功するイライザたちだが、
実験を目前に控え、研究対象が消えた事態の発覚を受けたストリックランドらは、
上層部からの容赦ない圧力もあって
血眼になって連れ出した犯人と生物の行方を捜索し始める…

一方センターから逃げ出し自由の身となった”彼”だが
”彼”が生き抜くには過酷な環境下に身を晒すとあって
日を追うごとに衰弱していくのであった…。


友情と裏切り、
愛国心、
奉仕の心、
仕事と責任、
科学に対する敬意、
未来への憧れ、
そしてなにより、形をもたない、色々な用途や役割を担う水、
”受け皿”によっていろいろな形を形成しては、意味を成し得るその点に
愛のもつ可能性と多様性を重ね合わせた、
愛の本質を、人類規模の思想を
力強く、心深くに響くようにと
ファンタジーの要素は必要不可欠であったと力説するギレルモ監督。
度合いは人に寄るでしょうが
心揺さぶられる作品であるには違いないかと。

ってなわけで、良作でした 笑
エアール

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