凛太朗

シェイプ・オブ・ウォーターの凛太朗のレビュー・感想・評価

4.6
第90回アカデミー賞作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞、第74回ベネツィア国際映画祭金獅子賞受賞の、ギレルモ・デル・トロ監督による恋愛ファンタジー『シェイプ・オブ・ウォーター』。
最近スプリンクラーのトラブルにより劇場水浸しの被害にあった映画館で鑑賞。とんだ水の形である。

Shape of water=水の形。
水の形=無形。

これが全ての映画だと思う。
緑色や青色、差し色として反対色の赤が目を惹く映画ですが、この映画、オスカーで撮影賞はノミネートだけで受賞はしていないんですよね。
この映画もまた構図が美しい。

しかしそこはギレルモ・デル・トロ監督。ただ美しいだけなわけもなく、またとんでもないもクリーチャーを登場させやがってます。
あれは、半魚人というかサハギン?FFとかのRPGで似たようなものを見た気がする。
『とんでもない』とか『クリーチャー』とか『もの』とか、言っちゃいけないようなことを言っていますが、わざとです。それこそがテーマの一つですからね。

舞台は1962年という冷戦真っ只中のアメリカですが、明らかに反トランプ政権の色がうかがえます。
主人公はサラ・ホーキンス演じる発語障害の女性イライザ。
サラ・ホーキンスさん、発語障害の女性を上手く演じてるのもありますけど、脱いだり自慰行為をしたりと体当たりな演技をしてますね。
その他の主要登場人物に、なんだか偉そうな差別主義者みたいなストリックランド、イライザの住むアパートの隣人でゲイのジャイルズ、イライザと同じ職場で働く清掃員の黒人女性ゼルダ、実はソ連のスパイであるホフステトラー博士、そしてサハギン(半魚人)などなど。

イライザを筆頭にマイノリティが威張り散らかしたストリックランドに鉄槌食らわす映画のようで、このストリックランドも自分はまともと思っているだけのマイノリティ。
用を足した後ではなく、用を足す前に手を洗い、ノーハンド小便をした後に手を洗わないくらいには変わり者。
誰かを、何かを支配していないと自制心を保てない様子。資本主義社会に対する皮肉に見える。

しかし、確かにそうした政治色がある映画ではあるけれど、単なる一方的な批判にとどまるだけの映画ではありません。
障害、LGBT、人種等々における弱者やマイノリティと呼ばれる方が、マジョリティや権威に対して立ち上がり、最後には勝利を収めるっていうアメリカン・ドリームでもなければ、権威に敗れて散っていくといったアメリカン・ニューシネマ的な話でもなく、あくまで愛についてのお話。

水の形は無形。
愛も形が無いもの。
それを、サハギン登場させて人種どころか異種間で表現するというギレルモ・デル・トロならではの映像もお話も奇妙で美しい映画でございます。

ただこの映画、いろんなところで深読みできる描写が多々あるように思います。
虐げられるサハギンは治癒能力とかいう奇跡みたいな能力を持っていてキリストみたいだったり、イライザの首の傷の理由が気になれば、ストリックランドもわざわざ首に傷をつけられたり、水中で交わってみたり卵が何度も登場したり、色々考察できそう。
凛太朗

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