かなちゃんマン

あゝ、荒野 後篇のかなちゃんマンのネタバレレビュー・内容・結末

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

PFFで世界最速前後篇一挙上映に行ってきた。
終わった後の放心状態、
BRAHMANの今夜の一節
しゃがみこんで動けないよ
がまさにそれ!状態。

凄い。
なんて映画だろう。

菅田さんとヤンさんの身体が凄いことになっていた。
ボクサーの身体って美しい。
あの体型維持するの大変だったろうな。
それから今野さんの裸体美しかったなぁ。美乳。乳首が綺麗なピンク色で羨ましい。

と、明るい感想の次は暗い感想。
バリカン。
最期は原作読んでいたから知っていたはずなのに、驚いたし、哀しかった。
でも彼は最期愛する人に殺されて幸せだったんだと思う。
誰にも相手をされず、父親に酷い暴力を受けて、吃音と赤面症に悩んで苦しんで泣いてきたバリカン。
あの日新次に出会って、ボクシングに出会って、少しずつ変わって。
良かったね。幸せになれたね。

新次。
幼い頃に父親は自殺、母親に捨てられ孤児院ではいじめられ、悪事に手を染め、仲間に裏切られ、慕っていた人は裏切ったやつと仲良しこよし、恋人もいなくなり、ジムもなくなり、バリカンは死んだ。
彼はこれからどうするの?
違うジム?それとも目的をなくした彼はボクシングをやめるの?
どちらにしろ新次はまた孤独になった。
居場所もない、誰もいない。
バリカンと新次の対比が物凄く哀しかった。

孤独をブチ壊せ。
それを達成できたのはバリカンだけなんじゃないか。


そして、菅田将暉。
最高の作品に、最高の演技、素晴らしかった。
インタビュー記事で、岸監督が「バリカンが泣いているのを聞きながら、新次はアドリブで眼を閉じる事で絶ち切るのを表現した」と言っていたが、凄かった。
あれアドリブかよ。というか岸監督自体今日の挨拶で、顔合わせ、本読みはやらない。ドライ、テスト全部嫌いでほぼやらないと言われていて、菅田さんも岸監督は長回しが多くて役者に任せてくれると言っていたのを思い出して、改めて菅田将暉とヤンイクチュン半端ないと思った。

そして新宿新次の最後の表情
ゾッとした。

怖い。
菅田将暉が怖い。
あの表情にすべてもっていかれた。


ただ後で気づいたのだが、改めてあの場面を観ると、暗い瞳でこちらを見たあとその瞳に一粒の光がぱっと入る、そしてまた暗くなり目を背ける
約23秒の最高のラストカット

もしかしたら暗いだけの終わりではないのかもしれない


追記
ずっと原作の最後の診断書が気になっていた。
読んだ人はわかると思うが、死亡した人の名が二木建夫。バリカンの父。でも死亡理由はバリカンを指す。
どういう意味かとネットで検索しても寺山さんの書き間違えという意見しかない。
今回の映画。
確認していないが、あれは建二ではなく建夫ではないかという意見を見て成る程確かにと思った。
でもどうなんだろう。
確かに製作側にはそうとも読み取れるようにした意図も感じるが、正解は分からない。
わたしは、最初に感じたままのラストが良い。
変にバリカンは生きているなんて、生ぬるいラストは嫌だな。
もちろん「あの診断書は建夫のもので、最後の新次が見ていたのはバリカンである」という意見があるのも別に良いと思う。
正解はない、観たひとが思うもの。
これはそういう映画なのだと思う。