Kana

あゝ、荒野 後篇のKanaのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
3.0
生きるための術としてボクシングに縋りついてきた2人の男が、ただ生きるだけの人生から一歩先へ進むために、下した決断は正しかったのか。

前編の、殺伐とした空気から徐々に人の情が生まれていく様とは全く違う話のように感じました。
ボクシングを通して世の中や人とのつながりを取り戻した2人には、今だけでなく過去や未来を見つめる余裕ができた。
その結果、目的と手段が逆転してしまったような、不器用で苦しくてもそうすることでしか前に進めなかったような。

2時間半の後編でかなりの時間がスパーリングに割かれていて、拳のやりとりが凄まじい。
拳で語るとはこういうことなのか…。
めちゃめちゃ痛々しいし、ただ殴り合ってるだけなんだけど、感情が目に見えるのがすごい。
言葉や態度や感情表現ってもっとたくさんあるはずで、これが正しいとは思えないけど、こうゆう形でしか心の底の葛藤を解消できなかった男を演じきることは本当に難しいだろうなと。

前編、後編、それぞれがまるで別の話のように成り立っているのがすごい。
何かを得ることで何かを失い、何かを失うことで何かを得るという、表裏一体の物語。
張り詰めていく空気と、積み重なっていく愛情がパンクしちゃう危うさにハラハラしました。
でもちょっといろいろやりすぎ感はあるんだよなぁ…。
過去は過去としてあっていいんだけど、そんなに全部無理矢理リンクしなくても、過去のままでよくない?
中途半端すぎじゃない?
特にあのオヤジの件は納得いかないなー。
本気で過去と向き合い本気で後悔して本気で反省してるわけでもないのに、独りよがりにちょっと美談にしてるんだから意味がわからん。
母の件も全く解決してないし、政治活動もいらないし、混沌に全てを委ねすぎ感はありました。
Kana

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