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アナと雪の女王2のRenのレビュー・感想・評価

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
4.0
劇場鑑賞ぶりに再見。大ヒットした「アナ雪」の続編とあらばハードルもプレッシャーも段違いだったろうに、これだけのクオリティを繰り出せるのがディズニーの底力だ。前作の未熟だった点をしっかりクリアした傑作。

前作を観た人は全員観ること。以上。
昨今のディズニーにおいて、ここまで王道な続編も珍しい。前作の魅力的な世界観とキャラクターを壊さず、お話はより深くダークに。
間に作られた短編二本で、「アナ雪」もキャラ萌えに特化し純粋にマネーメイクするブランドになってしまうのかな....と危惧したりもしたが、ディズニーは今作を単なるファンムービーではない真っ当な続編に仕上げた。信頼できる。

ただしその副作用として、『Let It Go』のような代表的アンセムの不在と、子どもを置いてけぼりにするそこそこ難解なストーリーでポップみはある程度削がれた。でも多少のキャッチーさを犠牲にしてでも語るべき物語だったし、前作と二つで一つの作品になっているのは間違い無い。

アナとエルサが自身の出生を巡る、血縁と負の遺産の話。
今作でも意外な黒幕が登場するけど、それが前作のような単なる意外性だけの展開になっていないのがとても偉い。前作は("悪役" にだけ注目して観た場合)外部の悪人に対して身内が結託し懲らしめる話だった。しかし今作は、揉み消された身内の負の遺産に対して身内として向き合う話にまとめており、単なる「外vs内」構造にしていないところに前作からのステップアップを感じた。

真相に辿り着いたエルサとアナが、各々でやるべきことを選択し行動するのが何よりもエモーショナルだった。ラストの最重要シークエンスで2人は出会わない。魔法を使って水と氷を操るエルサと魔法が使えない人間として奮闘するアナの対比もよく表現されていて、ラストの選択の説得力がぐんと増す。
序盤で一緒にジェスチャーゲームをするときはどこか辿々しい2人だ。元々性格がまるで違い(俗な言葉を使うと、隠キャのエルサと陽キャのアナ)、映画的な映え方が全く異なるので、2人には寄り添い合って(同じ画角に同居して)いてほしいと思う一方で、離ればなれになってほしいという思いもある。

このように脚本がとても好みの映画だったけど、特筆すべきはアニメーション表現の進化。水が超重要モチーフなだけにそこがチープだと一気にコケるけど、今作はレベルが違う。水飛沫の一粒ひとつぶにまで宿る映像美はアニメ史に刻まれるレベル。
特に凄いのは、エルサがダークシーを渡る海上アクション。うねる大波、鋭く輝く氷、パンツスタイルで髪をまとめたエルサ、全てが完璧!

ところで今作を観て『天気の子』を想起する人は少なくないのではないだろうか。どちらも、結果的に天災を引き起こすことになってしまった主人公たちの選択の物語。アナとエルサは過去の身内の罪と向き合ってそれを清算しようと奮闘する、至って真面目なヒロインだった。「アナ雪2」を観ると「天気なんか狂ったままでいいんだ!」と叫んで世界への贖罪よりエゴを優先する『天気の子』の異常性がよく分かる(自分は新海作品では『天気の子』が一番好き)。

その他、
○『Show Yourself』の場面は、シリーズ屈指の感情大爆発シーン。大好き。
○ その後エルサが過去に触れるシーンは、『インターステラー』の4次元空間なんかも思い出した。
○ アナへの想いを伝えきれないクリストフが歌う『Lost in the Woods』が個人的ハイライト。80'sロックバラードを研究しまくって作られた、ディズニー流 "真面目に不真面目" の最高到達地点。絶妙にダサい当時のMV風演出、Queenの『Bohemian Rhapsody』パロディなど大人の悪ふざけが最高。
○ 前作では物語の核から男性が排除されていたけど、今作でもそれは同様。でも男性キャラも救われたので良かった。現在は女性キャラクターが中心となって活躍するタームなのでこれでOK。
○ 1と2を通して観ると色んなところでバランスの取れたシリーズになっていたなと改めて思った(子ども向け/大人向け、ポップ/ダーク、外/内、等)。自分は2が好きだけど、総合してこのシリーズを好きになれた。
○ 相も変わらずアナが魅力的。初見時、劇中でアナの口から「元カレ(ex-boyfriend)」という言葉が飛び出したときはびっくりした記憶が。でもアナなら言いそうな納得感。推せる。
○ エルサが自分のLet It Goを黒歴史認定していたの好き。あとサラマンダー手に乗せて熱がってるの可愛すぎ。推せる。
○ 今作のクリストフは一途に推せる。あと彼の良き相棒であるスヴェンとどこか達観してるオラフも推せる。
○「前作のほうが好き」とかではなく「前作のほうが完成度高かった」はさすがに歌の印象に引っ張られすぎだとは思う。
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