アナとエルサの両親との幼き頃の記憶から始まる本作は、寝る前に聞かせるお話や、ハッピーエンドのお伽話、子や孫世代に受け継がれる英雄譚といったような物語は、実は自分たちの都合のいいように捏造され、事実と全く異なることがあるという、物語ることの危険性が大きなテーマとなっている。
前作で説明不足だった、何故エルサが魔法を使えるようになったかという、呪いであり、贈り物であり、本人を形成するアイデンティティのルーツを探っていくことで、物語が孕む底なしの沼に突き落とし、死さえも描いてみせる。
だからこそ、本作はアナとエルサの個人的な記憶と、捏造された物語と対峙し、正しき物語を新たに語り直していくという話のため、その他のキャラクターはほとんど本筋には絡まない。特にシリアスな展開の中で、能天気にプロポーズのことばかり考えている王子をはじめ、男性に助けられるか弱いヒロイン像はもはや微塵もない。
前作から非常にダークファンタジー色の強い作りになっているのが興味深い一方で、あまりにも閉鎖的かつ観念的な場面も続くため、エンターテイメントとしての魅力は前作からかなり減じているのは否めない。
ただアニメーションとしてのクオリティは一級品で、特に記憶と密接にリンクしており、氷の元でもある「水」の描写は驚異的。また前作よりもインパクトは弱いが、キャラクターたちが歌うひとつひとつの楽曲のクオリティも見事。