テロメア

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦のテロメアのレビュー・感想・評価

4.6
まともな人からどんどん変わらざるをえなくなる『戦争』という人生のターニングポイントが描かれている。

セイラとドズルが特に顕著。前者は戦わねばならない状況に陥り、自己防衛として戦うことを決意する。後者は戦っているなかで、自分では背負いきれない犠牲を出してしまい、それらを行った自らを肯定するために(精神の崩壊を防ぐためのこれも自己防衛として)弱肉強食論を持ち出す。相手への敬意を忘れないのに、弱いからいけないのだという暴論は自らの優しさが弱さだと言っているようなもので痛ましい。

ファーストガンダムの主題から一貫している『戦争』としてのガンダム。今シリーズもそれが貫かれていて、今作は次作との前後編。ファーストガンダムを観ていないときから、聞いたことがあった『コロニー落とし』が描かれている。コロニーという一都市を丸ごと地球に落とすという暴挙。こんなのは核兵器どころではない。核兵器を使ったアメリカですら真っ青な、人道なんてクソ喰らえ精神。ギレンは完全に戦争のために戦争する理由を当てはめているヤバい奴だ(ヘルシングの少佐型)。シャアも一種のそれに見えるけど、彼は両陣営に恨みがあるから潰し合いを楽しんでいるだけで、根っからの狂人ではないという違いも描かれていていい。今作は一番濃いエピソードだった。

今作はファーストガンダムとの繋がりも濃いので前日譚の醍醐味である、本編を知っているからこそ、という楽しさが存分に感じられてよかった。やはり、前日譚は「行き着く先を知っているからこそ」という楽しみがあるのがいい。この楽しみが前日譚好きとして最高でした。
テロメア

テロメア