MasaichiYaguchi

ボンジュール、アンのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ボンジュール、アン(2016年製作の映画)
3.5
フランシス・フォード・コッポラの妻で、ドキュメンタリー監督として「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」という素晴らしい作品もあるエレノア・コッポラが80歳にして初の長編劇場映画監督を務めた本作には、人生の機微や生きる上でのヒントがユーモアやエスプリを交えて描かれている。
有名な映画プロデューサーを夫に持つアンは、ある事情で仕事に追われる夫と離れ、夫の仕事仲間のフランス人男性ジャックと共に車でカンヌからパリへ向かうことになる。
時間にして7時間のドライブの筈が、ジャックの誘いで思わぬ“道草”をしていく。
この作品はアンとジャックによるロードムービーなのだが、そのドライブで登場する所はフランスのツアーガイドブックにも掲載されているとはいえ、ジャックによる“一味違う”名所巡り。
そして食通でもあるジャックは、実在する様々な人気のレストランや有名店にアンをエスコートしていく。
そこで供される料理が見た目からして美味しそうで、流石、世界三大料理の一つだと思う。
また、フランスは美食の国であるのと同時に芸術の国でもある。
写真撮影が趣味のアンによって写しとられたものには、美味しそうな料理やワイン以外にも、アートの一端が切り取られていて感性が刺激されてしまう。
アンらと共に観客もフランスのショートトリップを味わえる本作は、仕事ばかりの夫を持ち、子育てを卒業した女性が今までの自分を振り返り、そしてこれからの人生を前向きに考える“人生の道草”を描いた映画だと思う。
アンを演じるダイアン・レインは50歳を過ぎたが、年を経るごとの美しさ、内面から発するオーラのようなものを感じさせてくれる。
「五十にして天命を知る」ではないが、本作を観ると、まだまだ人生、一花も二花も咲かせたくなります。