ゆみモン

すもものゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

すもも(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2019年にこのような佳作が公開されていたとは、全く知らなかった。
白黒映像が、戦前あたりに作られた映画のような雰囲気を醸し出している。(多少、現代風な顔立ちの役者がいたり、言葉遣いが時代設定にそぐわない箇所はあったりしたが…)

失礼ながら、里見浩太朗以外はあまり有名ではない俳優たちだが、みな無駄な力が入っていないというか自然な演技で、ストーリーが心に沁み入ってくる感じだった。

幾度となく襲いかかる過酷な運命を受け入れ、決して捨て鉢にならず、その場その場で自分がやるべきことを全うしてきた、加川慎一郎。
自分が左手左脚に障害を負い、顔にも醜い傷痕が残ってしまった原因が、実は火薬の調合をした者のミスだと知った時の悔しさは如何ばかりかと察する。
それでも、武士の身を捨て、寺子屋の師匠として身を捧げていた慎一郎には、子どもたちへの教育が全てだった。

切なく辛い結末だが、心が洗われるような静謐な作品だ。

ラストのカラー映像の、すももの赤い色のなんとも美しいこと。