efn

ウィンター・ウォー 厳寒の攻防戦 オリジナル完全版のefnのレビュー・感想・評価

4.1
 古き良きバザンスタイルの遠景長回しがたっぷり詰まった冬戦争映画。遠景が多いからフィンランド軍の演習映像のように見える、がそれは偽装で偶然を装いながらも爆発のタイミングは調整されフレーミングもかなり丁寧になされている。ツポレフによる爆撃は投下から着弾までをティルト/ワンテイク、木々をなぎ倒している砲撃をものともせず押し寄せる赤軍兵士たちも爆発と共にある。爆発を合図にフレームインする赤軍を見ればわかるように本作ではタイミングと空間的同一性が常に担保されている。
 またフィンランド兵のクローズアップとソ連兵のロングの切り替えしにも注目したい。ここでは自軍の主観性と敵軍の客観性を意識した撮影と編集がなされている。ハリウッドスタイルからすると不親切だが”雲霞”という形容がそのまま当てはまるソ連兵を捉えるには格好のスタイルだろう。人海戦術を撮った作品には他に欧州の解放などがあるが、ここまで量が恐怖として表された作品を見たことがない。
 やや画角にこだわり過ぎているためショットの違いに気付きにくい作品ではあるが戦争を題材にとった記録映画としては西部戦線異常なしに匹敵する作品だと思う。傑作。
efn

efn