ロードの無いロード・ムービー
愛の無いラブ・ストーリー
犯罪の無い犯罪映画
まさにキャッチコピーその通りでからっと晴れた青空の下、何者にもなれなかった人たちが燻った生活をしているのを今作は描き出している。
フロリダの南、湿地帯の通称“リバーオブグラス”(草の川)と呼ばれるかつては人の住めない土地だった地方に住むコージーは30歳の子持ち主婦。彼女は毎日に退屈しきっていていつか子供を裕福な夫婦が引き取ってくれて自由になれることを夢想している。
一緒に暮らす父は昔ドラマーだったがコージーが生まれた事を機に警察官になっている。(一応公務員で安定しているから。)
その父が酔っ払って銃を失くしてしまう。
銃をたまたま拾った友人から譲り受けた男リー。
リーは定職にも就かず母親と暮らしブラブラしていて銃を手に入れた後コージーと出会う。
“運命的だな”
二人がバーで意気投合してたまたま忍び込んだ人の家のプールで人を撃ってしまったと勘違いしそこから2人の行く当ての無い逃亡が始まる。
運命的だなと映画でしか言わないようなロマンチックなセリフを言ったリーもコージーもめちゃくちゃつまらなそうな顔をしているのが印象的。
そもそもリーは若いのに頭皮が危ういし格好もみすぼらしい。めっちゃ短いシケモクを忙しなく吸ってるような男。
コージーも30代子持ち・生活に疲れてます!がしっかり法令線に刻まれている顔をして恐ろしく映えないカップルが目的の無い逃避行をする訳だから世の無常を感じるし虚無感も半端ない。
そんな二人のどうしようもない雰囲気に乾いたフロリダの空はどこまでも高く澄んでいて美しい。
これがもしもっとスタイルのある2人だったらバッファロー‘66になってたんだろうし(ギャロはこれ観たのかな)もっとポップに進化させたらタンジェリンとかフロリダプロジェクト、ショーン・ベイカー作品に繋がる。
2人が恋愛関係にならないのもリアリティがあって良かった。全体的にセックスの匂いすら渇き果てている無気力さ。2人のバーでもシーンやモーテルで足でタバコを吸うやり取りに表れていた🚬
* * * *
バッドランズを観に行くのでなにか似たテイストのものを観ておこうと再生。
思った以上にバッドランズだった(レビューはバッドランズ鑑賞後に書いてる。)
15年後のバッドランズと言った感じ。
もう若くなくて勢いとか世間に対しての苛立ちとかも生活の雑事に紛れてただ無気力に毎日をこなすだけになった男女の記録だった。
冒頭の生い立ちを語るシーンからもう好きが確定してた。
全体にグランジっぽい雰囲気ファッションとか音楽とか(パパのドラムの乾いた質感🥁)90年代を感じた。
こういう逃避行ロードムービーが死ぬ程好きなんだけど何故かと考えたら高校生の時の夢が駆け落ちだった事を思い出した。
恋人と北の方に逃げて(日本海側。何から逃げてるかは不明。)恋人は人のいない海で海の家を始める。私は近くの旅館の中居をやって細々と生活する。
逃避行って良いなあ。