チーズマン

ビューティフル・デイのチーズマンのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
3.9
観てる内にどんどん感覚が研ぎ澄まされる。

21世紀の『タクシー・ドライバー』というのは言い過ぎだと思うけど、厚みよりもエッジ、先端をもっと鋭く研いだような魅力を持つ作品なのは間違いないと思う。

映像と音楽と、最低限のセリフで、間の説明をすっ飛ばして観る人の感覚に暴力的に何かを打ち込んでくる。
単に痛そうな描写があるとかじゃなくて、諸々の要素が噛み合ったまさに“バイオレンス映画”だと思った。

その肝心な作品としての画がしょぼかったら凄いつまらない映画になるけど、あのフォアキン・フェニックスの役柄として完璧なボディと存在感な何にも勝る説得力を持って映画の“中心”に居座る。
そりゃあ画面から目が離せない。


たまたま同じ日に観た『ウィンド・リバー』が、世の中にカウントすらされない“死”への尊厳の話だとすれば、この作品は世の中にカウントすらされない“死”への愛情を凄く感じた。
思わず落涙しかける場面も何度かあった。


主人公=映画音楽。
主人公と同化したような不安でギラついた音楽、その暴力的な使い方がたまらんものがあった、もはや主人公の分身と言ってもいいでしょ。
ビッグバジェットでは無いこういう作品を作る時は普通なら映像の編集がある程度終わってから残りの予算に合わせたレベルで映画音楽を作ってもらうらしいけど、この作品は音楽制作と映像や編集がそれぞれインスピレーションを受け合いながら“1つの映画”を作るという『君の名は』スタイルで、手間がかかるけどハマれば絶大な効果。

リン・ラムジー監督とジョニー・グリーンウッドの間のインスピレーションのキャッチボールがとても上手くいってるんだと思った。
音楽だけなら同じ組み合わせで前作の『少年は残酷な弓を射る』よりも更に良くなってると思う。
ちなみにジョニーはこの後すぐに『ファントム・スレッド』で打って変わってクラシカルで豊潤な、またもや作品に欠かせないほどの音楽を作り上げるんだから幅の広さにびっくりした。
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