よしおスタンダード

ビューティフル・デイのよしおスタンダードのネタバレレビュー・内容・結末

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

どうも近頃、説明の多い映画に慣れすぎている。台詞の多いシナリオに安心しきっている。演出過剰と思われるような演技に頼り切っている。

少しでも説明が足りないと「意味がわからんぞ!」「つまらんぞ!!」となる。

そしてそういう類の、いわゆる説明過少な、難解な部類の映画を褒めると「通ぶってんじゃねーよ」「評論家気取りダサいですね」「はいはい頭いいアピご苦労さん」となる。少なくとも私はよく友人からそう言われて馬鹿にされる。好きな映画を褒めて馬鹿にされているのだから、よほど映画を愛していないと精神状態を保てない時もある。

でも、いいものはいい。全く意味が分からなかろうが、その映画が自分の琴線に触れているのは事実なのだから、映画好きとして褒めたたえるべきである、というのが私の信条である。

それら説明過多な映画とは見事に対照的な本作は、挑戦的とも思えるし、挑発的とさえ思える。

本作のホアキン(ジョー)は、ほとんど台詞がない。ほぼ表情が変わらない。極端なこと言ったら、ハンマー持って暴れまわってるだけである。法に依らずに少女を救う、という点では、「タクシードライバー」みたいだし「レオン」みたいだ、ともいえる。でも、ジョーの冷静さと無情・非情さは、私には「ノーカントリー」のアントン・シガ―を想起させて身震いがした。

だから、台詞でストーリーを推測し、ジョーの表情から作品のニュアンスを汲み取ることは非常に困難である。

でも、ジョーが何かのトラウマを抱えていることはわかるし、苦しんでいるらしいことは伝わる。そして、救い出される少女もまた苦しんでいることはわかる。

しかもなにが凄いかって、少女は最後、自力で敵を殺している。一仕事終えて優雅に食事までしているのである!

最後はどんなにジョーが暴れまわって少女を救い出すのかな、と思って見てたら、とんでもない一本の取られ方であり、ジョーと一緒に「おいおい、そこは救い出されてくれよ!!」と突っ込みたくなるのである。

そして、そんな二人のラストには「beautiful day=天気のいい美しい日」が待っているかもしれない、そして、原題「You were never really here」に沿って言えば「君は決して、実際にここにはいなかった=じゃ、どこにいたんだ!?」とか思ってしまって、もう訳が分からなくなる。

すると、ラストシーンでは、二人が座ってたはずのレストランの、向かい合わせの席が無人のまま映画は終わるのである。

わからない余韻を楽しむのもたまにはいい。(しょっちゅうだと疲れるけどw)