アンドレイ・ズビャギンツェフ監督のサスペンスドラマ。
離婚寸前の夫婦。激しい口論の翌日に、一人息子が失踪する。
「子供なんて欲しくなかった。見たくもなかった。なんという失敗をしたんだ。」
初アンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品。
映像的にもストーリー的にも光がなくて気が滅入ってくるが、間違いなく傑作。愛のない家庭こそ、この世の地獄なのではないかと思わされる。
ラブレスな世界観の創り込みが見事。ターミネーターみたいに無感情、無表情、棒読みの人間たち。雪、曇り空、廃墟、枯れ木といった生を感じない景色。テレビやラジオからはウクライナ紛争や不景気に関する暗いニュース。
脳裏に焼き付いて離れないショットがあった。部屋の中をゆっくりパンしていくと、ドアの影に、自分の存在を巡る両親の口論を聴いて、声を押し殺しながら泣きじゃくる少年が映り込んでくる。胸が張り裂けそうになるほど辛かった。
息子のことより世間体を気にする男。息子のことよりSNSを気にする女。自分の都合しか頭になく、息子の親権を押し付けあうなんて言語道断だ。
望まない妊娠。金はあるが愛のない日常。
「男は皆子どもだと思ったほうが良い。」
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