クリーム

ラッキーのクリームのレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
4.0
90歳のラッキーと言う男の地味だけど素敵な人生を飾らず等身大に描いているのが心に沁みた。凄く好きなタイプの作品。100本を超える作品に出演した名優ハリー·ディーン·スタントンの遺作です。こんなに遺作にピッタリの作品あっただろうか?彼の演技がリアル過ぎて、心を揺さぶられるけど、ラストの笑顔がなんとも言えず愛おしい。良い映画。

独りでずっと生きてきた90歳の男、ラッキー。目を覚ますとコーヒーを飲んでタバコをふかし、なじみのバーで常連客たちと酒を飲む。そんなある日、自分に人生の終わりが近づいている事に気付いた彼は、「死」について思いを巡らせるのだった。




ネタバレ↓



ラッキーは、とても幸せな男だと思えた。確かに1人で生きているけど、知り合いが近くにいて、皆が気にかけてくれている。あの年まで元気で自分の事は自分で出来て、友がいて、人と話せる。90歳になったら、そんな人は少ない。
勿論、心細い気持ちも解るし、不安で怖いだろう。自分に置き換えたら、想像もつかない程恐ろしい。
年を取る毎に孤独に耐える為、心が鈍感になったらいいのに…ってたまに思う。
ラッキーは、加齢で倒れ、自分の死について考え、悟った。静かに死を受け入れる覚悟が出来たのかも知れない。
終盤に行き付けのスナックで、タバコを吸おうとして口論になり、
この世界にあるのは最後には全てが無になるという事だけだと言います。
全てが無ならどうすればいいのか?と聞かれ、「微笑むのさ」と静かに答える。
ラッキーは店内でタバコに火を付け、店を出て行った。
ラストに砂漠へ散歩に出た彼は、大きなサボテンに小さな花のつぼみを見つけ、微笑む。この笑顔が本当に素敵で、忘れられない。
彼が立ち去った後、行方不明の亀のルーズベルトがゆっくり歩いて行くのもほっこりして良かった。

演技なのか?所作がリアル過ぎて、ご本人の日常を観ている様な錯覚を起こす。悟りを開き死を受け入れた人間の顔って、あんな感じで穏やかだと嬉しい。ラッキーと一緒に死について考えさせられる作品で、観る年齢や状況で思いも違って来そう。素敵な映画に出会えたと思う。

※のんchan 、これは、凄く胸に沁みました。ありがとう。
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