文字通り自らの欲望のままに生きる女。
「ロスト・ドーター」のように母性神話の解体を行うのではなく、モンスターの設定として母というカテゴリに当てはめている。行動原理が一切説明されず、共感させる気が微塵もないのが恐ろしい。
名言されてこそいないが、娘の体型に口出しし一般的に女性の幸せと言われていた子供・夫・家を奪うことで、逆説的にウーマンリブ的なメッセージを表象しているのか…?
だとしたらかなりトリッキーだが、この監督ならやりかねないとも思う。
怠惰な前半から打って変わって、絶望に必死で立ち向かわんとする妹には「ロゼッタ」や「ある子供」などのダルデンヌ兄弟の作品を思い出した。人を訪ねては空振りするところは「サンドラの週末」だろうか。違うのは、理不尽の原因が社会ではなく母だということ。
ただ今作で最も辛いのは、毎朝妹の喘ぎ声を聞きながら料理をし、奔放で半分しか血の繋がらない妹の分まで仕事をして稼ぎ、母からは肥満を理由に受診させられ下剤ダイエットと食事制限までさせられる姉クララだろう。彼女は人生でも、そしてこの物語においても脇役でしかない。