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女王陛下のお気に入りのスミスのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
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舞台はアン女王統治時代、18世紀初頭のイギリス。長年女王の側近として仕えているサラと、血縁を辿って王室に身を寄せた没落貴族の侍女・アビゲイルが、女王の寵愛をかけてバトルするストーリー。サラは冷酷な女で、女王にも忖度せずズケズケものを言うし、戦争好きで夫を前戦に送るわ、戦争を口実に増税するよう女王に促すやら、とにかく破天荒である(趣味は鴨撃ちだし)。しかし彼女のセリフにあるように、「嘘をつかないことが愛」というのが信念であり、そこはぶれない。片やアビゲイルは腹黒く強かである。没落しても貴族プライドは捨てずに胸の内に秘めている。女王に近づき再度成り上がるためなら、自傷(自分を本で殴るシーンがある)も嘘泣きも平気でする。かなり“負けへんで”精神の強い女である。

ストーリー自体がおもしろいので見飽きないが、随所に『哀れなるものたち』前夜が散らばっており見応えがあった。やや誇張されすぎな感があってちょっと居心地が悪くなる描かれ方の男の滑稽さ、広角レンズでぐるっと回るカメラの窮屈な視覚効果、そんなのアリ?と思うほどの無秩序でファニーなダンス。美術や衣装の美しさにも圧倒される。ランティモス強化月間、大変満足でした。
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