素晴らしかった。見れば見るたび発見があるんだろう。
3人の女性たち全員が主役。魚眼レンズでとったり、横移動ショットなど、ランティモス節全開のカメラワーク、自然の光のみでの撮影、寓話性を孕んだシーン。どれもが相互的に作用しあっている。ダンスのシーンで黒人女性が宮廷にいたりしてあり得ないんだけど、逆にそこで寓話として描いてるってことが分かる。
一番みやすいランティモスだというのはやっぱりいい意味でエグみが薄まって成熟したということだろう。
『籠の中の乙女』『ロブスター』がどちらも本人に意志はなく否応なく放り込まれる空間からの脱出だったのに対して、今回は逆のような状況。
前半はアビゲイルに感情移入して見ているが、後半はサラに感情移入。サラは本当にアンのことを思ってたんだよね。アンは根が真面目だから政治もできるんだろう。でもやりすぎて体を壊してしまうからサラは心配して代わりにやってたんじゃないかな。
そんな中登場したアビゲイルは完全に成り上がろうという野望を持った人物。彼女も彼女で身分を取り戻せればそれでよかった。
それを全て分かってアンはあの決断をしたんだろう。
サラがいうように三人はそれぞれ「目的が違った。」
ラスト、サラの全てを呑み込んで諦めた表情、アビゲイルの「取り返しのつかないところまで来てしまった」「もう逃げられない」と悟った表情、アンの「全てを理解しこれから生きていこう」とする表情、全てが素晴らしかった。
とはいえコメディなので、絶え間なく挟み込まれるギャグにはクスッとしっぱなし。