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ザ・スクエア 思いやりの聖域のmidimidiのレビュー・感想・評価

3.6
観ている間中、気まずさ全開でザワザワと落ちつかなかったが、観た後もしばらくの間、あれはどういうことだったの?とか、あのシーンの意図は何?とか考え続けたり、人と感想を言いあったりできるという意味では、味わい深く印象に残る映画。
主人公が美術館のチーフキュレーターという役所ゆえ、現代美術をイジるシーンがてんこ盛りだ。確かに現代美術は、さまざまなことを鑑賞者に投げかける。正義と悪、正常と異常、モラルとインモラル、公平と差別、健常と病理。境界ギリギリのところで表現し、物議をかもすこともある。そこを甘い覚悟で表現していると痛い目に遭う。
この映画では、そうした境界上で鑑賞者に問いかける現代美術を切り口に、ふとした拍子に境界を超えてしまう人々の危うさを描こうとする。目の付け所は面白いと思うが、実際の現代美術界はもっと遥かにキメが細かいし、熟考されて表現されている、と思う。劇中で炎上する展覧会のPVみたいのがノーチェックでアップされてしまうくだりなどは、リアリティに欠けるし笑えない。
全体に、そのシーンにこれだけ時間割く必要ある?と突っ込みたくなることが多い不自然な編集が、現代美術の映像作品に似たところはあるが、いやいやこれは現代美術じゃなくて映画なんだから騙されちゃダメだ、と思い直す。
劇中に出てくる表題名のアート作品 「ザ・スクエア 」が、もっと作品としてパワーがあり、テーマを引っ張るほどのものであれば、より説得力のある映画になったかもしれない。
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