チーズマン

ザ・スクエア 思いやりの聖域のチーズマンのレビュー・感想・評価

3.9
笑えて、居心地が悪く、全てが意味ありげで嫌でも考えさせられる。


理想的と言われるような福祉国家であり、幸福度ランキングで常に上位にランクインする北欧先進国スウェーデンの有名美術館のキュレーターの主人公(プライド高め)と、その周囲を通して上辺の“いい感じ”に隠れた“無関心、見て見ぬ振り、欺瞞”を次々と浮き上がらせるブラックユーモアな作品。

とにかく笑わせといて気まずくさせてくることのオンパレードだから困ったもんだ。笑


でも、現代芸術とか分からなくても普通に楽しめるのは良かった。


プライド高男の主人公のような個人の欺瞞と、集団の欺瞞を双方ちょっとずつ濃度を上げながら描いてきて、やはり双方で上限に達する濃ゆさの場面が訪れることになる。
その個人と集団というのが、美術館のキュレーターとその美術館の芸術を見に行く“いい感じ”の客達って構図もちょっと意地悪で面白かったなあ。
その双方の欺瞞の上限、どちらも相当きついものを観せられるんだけど、この映画を劇場で観てる観客からすれば集団の欺瞞が極に達する“パーティーでの猿男のシーン”の居心地の悪さは尋常じゃない。
劇場には結構人も入っていて、笑い声も起こるような雰囲気だったのが明らかにどんどん気まずい空気に変わる感じ、観客全員で、しかも劇中のパーティーの客同様にどれだけ居心地が悪くてもそこに居なければならないキツさ。
この劇中の集団の欺瞞が浮き彫りになるパーティー客のクソ気まずさの共有を、そのまま劇場の観客の集団に共有で味あわせるこの感じは個人で家で観ても多分なかなか分からない、このシーン1つだけでも劇場で観て良かったと思った。

だから、もし劇場鑑賞するつもりなら早めの方が、まだ客が入る間に観た方が良いと思う。


ただ、同じ150分の作品でも、この洗練された作品よりも『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の方が全然短く感じたようなタイプの人間である私にはカンヌってやっぱとっつきにくい…笑
チーズマン

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