イチロヲ

大河のうたのイチロヲのレビュー・感想・評価

大河のうた(1956年製作の映画)
4.0
貧困層の家族が聖地ヴァラナシーにて再出発の思いを込めるのだが、父親の突然死により、母子家庭へと成り果ててしまう。困窮からの脱却を目指している家族の数奇な運命を綴っている、ヒューマン・ドラマ。「オプー3部作その2」と称されている。

因果に翻弄されてきた家族が、母子家庭へと凋落。子供の母離れ、母の子離れに主眼を据えながら、「生き方の模索」を母子の双方向から描写していく。母による子煩悩が執拗に描かれているが、ここでは「家族離散を憂える気持ち」を推量する必要がある。

ガンジス川流域の生活風景が虚飾なしに収められており、「服を洗濯して、体を洗って、子供が遊んで、薬代わりに水を飲む」という、色々な意味でヤバイ川であることを、まざまざと見せつけられる(映像にはないが、川に遺灰を投げることもある)。

後半部では、ついに子供が青年へと成長。子供時代に遠方から眺めていた汽車へと単身乗り込み、「木綿のハンカチーフ(太田裕美)」の母子版が展開される。子供が傍にいなくなることに対する、喪失感の心理ホラーが見応えあり。
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