松井の天井直撃ホームラン

伊藤くん A to Eの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

伊藤くん A to E(2017年製作の映画)
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↓のレビューは、以前のアカウントにて鑑賞直後に投稿したレビューになります。

☆☆☆★★

原作は未読。ドラマ版は映画公開前に深夜で放送され、半分に短縮された総集編を録画して鑑賞済み。
(以後、ドラマ版に関する印象は、総集編を観た印象になります)

内容を知っての鑑賞だった為、予め他人のレビューを読んではいたが、かなりの酷評の数々は知った上でした。
内容の有ったオリジナル作品の『彼女の人生は間違いではない』を除き。最近の廣木隆一作品は、その量産振りとは裏腹で、中身の伴わない作品ばかりで、「嗚呼!やっぱりなあ〜」と思ってはいたのですが。映画版を観た限りに於いては、「予想外に作品としては成立していた」…って感じでしょうか。

最後はなんとな〜く…といった感で終わったドラマ版に対して。映画版では《取り敢えず前に進む事が大事》…と言った、メッセージ的な意味の作品なのかな?と言った印象を持つ。

伊藤は言う。リングに上がらなければ批判等浴びる事は無い!…と。
それに対してEは。それでも書く、例え無様でも書かなければ始まらない…と。

まあ、何だってそうなんですよね〜!
取り敢えず始めてみなければ、次の段階には繋がらないし、何にも見えてはこない。
レビューだってそう。「何を書いたらいいんかな〜…」と思いながら書いていると、その内に上から降りて来る時も有りますから。

…いや!いや!レビューの事はどうでもいい(汗)

ドラマ版との1番の違いとして。ドラマ版では最後に登場する岡田将生を、映画版では最初からはっきりと【伊藤】と認識。以後、このクズ男と並行して、ドラマ版と同じシュチュエーションが描かれて行く。
おそらくは映画版公開を見据えて、ドラマ版との同時進行の撮影だったのでしょう。
別に良いっちゃ良いんですが、ちょっとだけイラっとするのも事実ですなぁ〜。

岡田将生の出番が多い関係上、ドラマ版で描かれていた部分がかなりカットされているのですが。ドラマ版で1番面白く感じていた、Bと山下リオの関係がバッサリと無くなってしまっているし。Cの男に媚びる性格を如実に表す、バイト先でのタルトのエピソードがそっくり抜けてしまっているのは、個人的にかなり残念。
あのエピソードが有る為に。Cが好きでも無い男と寝た後で、虚しい気持ちに襲われる大事なエピソードだとは思うのだけれど…。
そのかわり…と言って良いのか分からないが。それぞれ単独で描かれていた、AのエピソードとBの話が並行して描かれる結果になり。ドラマ版を観た時に少し感じた。A・Bの単独話に対して、CとDとの同時進行の違和感は少し薄らいではいると思える。

どこからどう見ても痛くてサイコな伊藤。更に言えば大クズ男(笑)
ところが、そんなクズ男の伊藤がA〜Eまでの女達に、結果的には前に一歩進む後押しをする皮肉。

おそらく…とは思うのですが。ドラマ版を観た人には、映画版の意図するところが意味不明に思え。映画版だけを観た人だと、この後にドラマ版を観ると逆にしっくりいかない…。
そんな気がするんですよね〜!

どの作品でもそうなんですが、廣木隆一作品ではカメラが左右にゆっくりと移動。長回しを多用しては、観客を魅了する…時も有る(-_-)
内容の伴わない作品の時だと、中身が無いのをただ誤魔化しているだけ…にしか感じなくて。観ていて苛々するだけなのですが。その意味に於いて、この作品ではその様な思いは感じなくて、なかなか良かったと思っています。

2018年1月14日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ/スクリーン6